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介護付き有料老人ホーム「星にねがいを」の浴室で、機器を使って入浴する機械浴について施設長(右)の説明を聞く台湾の視察団

介護の理念・技術を台湾でも 医師ら来日し老人ホーム視察

 

 日本の高齢者介護の理念や技術を学ぼうと、台湾の台北医大付属双和病院の医師や看護師ら6人が5月17日、東京都葛飾区の介護付き有料老人ホーム「星にねがいを」を訪れた。施設や介護の様子を見学し、介護保険の仕組みや、認知症の高齢者に対応する際のポイントなどについて熱心に質問。視察団代表の内科医、林哲瑋さんは「高齢者が安心して生活している。日本で学んだ点を、われわれの病院でも実現できるようにしたい」と述べた。

居室を見学する視察団

 一行は医師、看護師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、放射線技師。林医師によると、今回の視察は「新たなサービスを創造するイノベーションラボを病院に作り、高齢者医療・介護の質と専門性を向上させるため、レベルが高い日本の施設を見学し専門家と意見交換したい」という狙い。

 背景には急速な少子高齢化がある。台湾の国家発展委員会が2022年8月に発表した人口推計では、総人口に占める65歳以上の割合は22年が17.5%、25年には20.0%、39年には30.1%に達し(日本は22年が29.1%、40年が35.3%の推計)、対応が大きな課題になっているという。

介護付き有料老人ホーム「星にねがいを」(東京都葛飾区)

 今回訪問した「星にねがいを」は04年に開設された。定員55人で入居者の平均年齢は88.5歳、平均介護度は2.7。認知症の高齢者を多く受け入れているのが特徴だ。一行は2、3階の居室や、デイサービスを提供する1階ホール、浴室などを見学。音読と計算を中心とした学習療法、手でやさしく触れて痛みや不安感を緩和するスウェーデン生まれのタクティールケア、花見や縁日といった年中行事などについて、同施設など25事業所を運営するアポロ・サンズHDの三浦眞澄会長らから説明を受けた。

スイカ割りや縁日などの年中行事も利用者の大きな楽しみ

 三浦会長は施設の在り方として「どこまでも家庭を目指している」と言う。一例として「スタッフは制服ではなく、普段着の上にエプロンを着用。食事のスパゲティにもみそ汁とおしんこをつけ、あえてカップラーメンにする日もある」そうだ。このほか、帰宅願望の強い認知症の高齢者には1カ月かけて信頼関係を築くことを第一にする、施設利用者を患者でも入居者でもなく「ゲスト」と呼ぶ、全スタッフの14%は外国人で80代のスタッフも5%いる、など現状を紹介した。

三浦眞澄会長(左)と林哲瑋医師

 3時間余りの視察と意見交換を終えた林医師は「最も印象的だったのは、ゲストや家族の要望をかなえるよう努力していること。われわれの病院は、就寝時間になると無理にでも患者を寝させ、食事になると寝ていても起こすが、ここでは自分のペースで生活できる。私の父も送りたいほどだ。ひざぐらいまで低くなる電動ベッドは、高齢者でも転倒しにくく、ぜひ導入したい」と感想を述べた。

 三浦会長は「台湾の現状は、介護保険制度が始まった2000年ごろの日本の状況に近いのではないか。高齢者や認知症の人には、医療的ケアや体を使ったケアより、心のケアが重要であることを理解してもらえれば」と、視察の成果が生かされることを期待していた。

デイサービス利用者と交流する視察団

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