2023年に60周年を迎えた「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」(東京都府中市)

サントリー、ビール工場見学ツアーをリニューアル プレモルの“こだわり”紹介、VR疑似体験も

 荒井由実(松任谷由実)の「中央フリーウェイ」の歌詞に出てくる「ビール工場」。中央高速道の東京都府中市辺りを走ると「右に見える競馬場」(東京競馬場)の向かいにある「左はビール工場」が「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」だ。

 1963年、ビール市場に参入したサントリー(東京)が国内で最初に造った工場で、昨年60周年を迎えた。工場見学もでき、ビール好きを喜ばせているが、このほど見学ツアーをリニューアル。4月10日からの一般公開に先立ち、「新・工場見学ツアー」の概要を公開した。

サントリーの主力ビール「ザ・プレミアム・モルツ」は、この工場で誕生した

 

▽プレモル誕生

 東京・武蔵野工場は、サントリーの主力商品「ザ・プレミアム・モルツ」(プレモル)や「サントリー生ビール」「金麦」などを製造。プレモルは、この工場で誕生したといい、見学ツアーはプレモルの“こだわり”について知ることができる。

 梅澤祐輔・工場長は、1989年に武蔵野ビール工場に開設した20分の1の大きさの「ミニブルワリー」で「失敗と挑戦の連続で試行錯誤しながら結実した(創業精神の)“やってみなはれ”の象徴だ」と「プレモル誕生秘話」を教えてくれた。

梅澤祐輔〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野工場長。「ユーミン、競馬場、ビール工場の三位一体で盛り上げていきたい」

 

▽天然水+つくり手の情熱

 見学ツアーは、麦芽、ホップといった「素材選び」に始まり、「仕込」「発酵」、熟成させる「貯酒」、「ろ過」を経て、缶に詰める「パッケージング」までの過程を案内係が解説しながら工場内を回る。

プレモルは、二条大麦麦芽に加え、甘みやコクが出るという「ダイヤモンド麦芽」を使用しているのが特徴だという

 

 リニューアルについて、ビールカンパニーの中村昌平プレミアム戦略部課長は「これまで見学ツアー参加者の声で一番多かった印象が『天然水へのこだわり』だった」と説明。「プレモルの魅力をさらに伝えるために『つくり手の情熱』を加味した」と話した。

麦芽本来のうまみやコクを引き出す製法を採用した「仕込槽」。小窓から麦汁になる様子をのぞくことができる

 

▽スコープで検査室見学

 具体的なリニューアルの内容として、最初に動画「つくり手の挑戦ムービー」を見てから見学をスタートさせることにしたという。また、新たに導入したのが「つくり手のこだわり」を知ることができる「官能検査室の疑似体験」だ。ビール製造過程で人の五感を使って味・香り・喉ごしなどをチェックする検査で、検査室に入ることはできないが、「VR(仮想現実)スコープ」を使って検査の様子を見ることができる。

コロナ禍で見学ツアーを中断していた時に実施したVR工場見学で使用した双眼鏡のようなスコープを転用。普段入れない検査室の様子を見ることができる

 

「担当になって検査室に行ったら『ぜひ見てもらいたい』と思った」とVR体験を導入した背景を説明するビールカンパニー中村昌平プレミアム戦略部課長

 

▽試飲時間を延長

 さらに「見学者が一番楽しみにしている」というビール(プレモル)の試飲ができる「ゲストホール」もカウンターを設置するなど改装した。ゲストホールまでの通路を「つくり手ロード」と名付け、工場で働く人たちの姿をパネルにした通路を通って「飲む前のワクワク感を演出した」。

見学を終え、ゲストホールにつながる「つくり手ロード」。各製造工程の「つくり手」たちに迎えられるように試飲コーナーに向かう

 

リニューアルされたゲストホール。「神泡セルフサーブ」や、泡に文字を書く「神泡アート」などの飲用体験ができる

 

 試飲ではプレモルを3杯まで飲むことができるが、試飲時間をこれまでの20分から30分に延長し、ゆっくりビールを楽しめるようにしたという。ツアー全体の時間も70分→90分に延ばした。ツアーは定員25人で1日6回実施。料金は1000円(税込み)。

試飲は「ザ・プレミアム・モルツ」「同〈ジャパニーズエール〉香るエール」「同マスターズドリーム」のプレモル3種。乾杯の合図はサントリー流に「スコール!」(デンマーク語で「乾杯」)と発声する

 

「記憶に残る体験」が狙いだという泡に文字が浮かぶ「神泡アート」

 

 サントリーによると、2023年のビール類市場は業界全体で前年比マイナスだったといい、ビール離れをうかがわせる。近年は、若者のアルコール離れや、ハイボールブームもあってビール類市場の低迷を指摘する向きもある。

 中村氏は「ビールは人を元気にする」と強調。中央高速から見える知名度がある「ビール工場」のリニューアルした見学ツアーで「市場を活性化させたい」と期待をかけている。

 

あなたにおススメの記事


関連記事

スタートアップ

スポーツ

ビジネス

地域

政治・国際

株式会社共同通信社