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若い世代の働き方の選択肢―「親子ワーケーション」 森下晶美 東洋大学国際観光学部教授  連載「よんななエコノミー」

 仕事と休暇を両立させるワーケーションという働き方も昨今の出社回帰ムードで注目度が落ちてしまったが、そんな中でも若い世代の関心を集めている「親子ワーケーション」を紹介したい。

 親子ワーケーションとは、ある地域に一定期間滞在し、親はリモートワーク、子どもは地域の学校に通うもので「ラーケーション(learning+vacation)」とも呼ばれる。広義には正規の通学だけでなく自治体や民間事業者の体験プログラムに参加する形態も含む。

 従来のワーケーションは子育て世代には子どもの学校というハードルがあり、滞在先の受け入れ教育機関の有無が課題だったが、これを解決したのが親子ワーケーションだ。

 好事例となったのが、株式会社キッチハイクが北海道厚沢部町で実施する「保育園留学」で、1~5歳の子どもを地域の認定こども園が1週間単位で受け入れ、親が仕事をする時間に環境の良い庭での遊びや地元の農作業などを体験するプログラムだ。

 これにより夏休みなどの休暇期間以外でもワーケーションが可能となった。リモートワークに必要な設備が整った宿泊施設や地域のコワーキングスペースなども用意されており、親にも使いやすいパッケージプランとなっている。今では予約が取れないほどの人気となり、同様の受け入れ施設を全国60カ所以上に展開するまでとなった。年齢も未就学児だけでなく小学生以上の子どもを受け入れる事例もあり、前述の厚沢部町では町立小学校で6年生までの全学年を通年で受け入れている。

 一方で親子ワーケーションにはまだ課題も多い。親にとってはリモートワーク自体を制限する企業が増えていること、費用が1週間で20万円を超える高額であること、また、子どもにとっては慣れない環境への適応の問題、受け入れ側にとっても慣れない子どもをケアする職員の負担の問題などがある。

 加えて、在籍する学校の出席とするには受け入れ先が「公立」であるという条件があるなど、教育面の課題は複雑だ。

 しかし、親にとっては働きやすい場所を選べることで、休暇の意味だけでなく、例えば親の介護や二拠点居住なども可能となり、子どもにとっても自然や人との交流機会が増える。

 また、地域にとっても若い世代の滞在が増えることで将来の有望な関係人口になるだろう。人手不足が問題となる中、若い世代に家族を含めた働きやすい環境を作ることも重要で、親子ワーケーションは一つの選択肢となり得る。今こそ学校教育にまで踏み込んだ制度整備が必要だ。
(東洋大学国際観光学部教授 森下晶美)


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