私たち「シェフス・フォー・ザ・ブルー」は先の5月、チームで東京・霞が関にある農林水産省を訪れた。水産庁の森健長官に、料理界からの提言書を手渡すためだ。
提言書のタイトルは、「魚が手に入らない! 〜シェフによる水産資源回復に向けた提言〜」。日々最前線の現場で料理人たちが抱いてきた水産物減少への危機感を政府に訴え、資源回復に向けた早急な施策を求めたいと、料理界初となるアクションに踏み切ったのだった。
5項目にまとめた提言内容は、資源回復を図るために必須となる資源調査・評価の充実のほか、トレーサビリティーの推進、補助金に依存しない魅力ある漁業の将来ビジョン構築など広範囲にわたる。マイワシやスケトウダラといった漁獲量の多い魚種を中心に管理を進める国に対し、漁獲量の多寡にかかわらず、地域経済や食文化にとって重要な沿岸魚種についても広く対策を進めることも提言に含めた。
森長官との意見交換は、当初予定の時間枠を大きく上回り、なんと1時間。提言内容について真摯(しんし)に受け止めていただき、「貴重な料理界の声に向き合い、今後水産資源管理の推進にいっそうの力を入れていく」という前向きな言葉をいただいて心強く思っている。
さて、シェフス・フォー・ザ・ブルーに在籍する約40人の料理人のなかから、当日長官との意見交換に臨んだのは5人。団体設立以来7年間、さまざまな活動を共にしてきた仲間であり、フランス料理、イタリア料理、中国料理、日本料理、すしの各ジャンルで日本を代表する立場のシェフたちだ。
日本でレストランを営む以上、日本料理やすしはもちろんのこと、あらゆるジャンルの料理において水産物は本当に大切な食材。世界に誇る日本の食文化は、実は海の恵みに大きく依存している。同日その後に開いた記者会見の場でも、「先人が築いてきた食文化を支える水産資源を、次世代につなぐのは私たちの責務」という彼らのまっすぐな言葉に、会見場の記者陣から大きな拍手をいただいた。
料理界の声を国に届けたい、という7年越しの願いをやっと実現させた今年。ここを新たなスタートに、今後も多くの方々と対話しながら、海と食文化を未来につなぐ活動を仲間たちと進めていきたいと思っている。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.28からの転載】