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東京に集中する結婚・出産 藤波匠 日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 連載「よんななエコノミー」

 2025年の外国人を含むわが国の出生数(速報値)は、70・6万人で過去最少となりました。ただし、前年からの減少率は▲2・1%と、22年から続いていた減少率が▲5%を超える急減の状況からは脱することとなりました。

 こうしたなか、前年まで減少していた東京都では、出生数が+1・3%の増加に転じました。他の多くの県で出生数が依然として減少している状況下、東京での出生増は目を引きます。

 東京都では、婚姻数も増えています。婚姻数は、コロナ禍による急減の反動や、結婚が多い30歳前後の世代の人口が下げ止まりにあることなどから、全国的にも微増(+1・1%)となりましたが、なかでも東京都が+4・8%と全国で最も高い伸び率となりました。一方、地方では、いまだ下げ止まらない県も少なくありません。

 地方の多くの県で婚姻数が下げ止まらないのは、第一に核家族化の進展があります。近年、地方において急速に核家族化が進展し、子の結婚に親世代があまりかかわらなくなってきていることが、若い世代の有配偶率(結婚している人の割合)を低下させる一因となっています。また、女性の地方からの流出が進み、若い世代において人口の男女比が男性過多になっている地域が多く、そうした地域では男性の有配偶率の低下が顕著に進んでいます。

 一方、東京都では、チルドレンファーストのかけ声のもと、児童手当の上乗せや医療費・学費の免除、住宅支援など、豊かな財政力に裏打ちされた手厚い少子化対策を導入していることが、結婚・出産が増えた一因と考えられます。加えて、これまで東京問題とされていた保育所の不足の解消、優れた教育環境、さらには共働き夫婦の増加に伴う通勤負担を減らす居住地選びなども、共働きで子どもを育てる家族の東京都への定着を後押ししています。

 以前は、結婚・出産を機に、東京都から住居費の安価な周辺地域に転居する世帯も少なくありませんでしたが、多くの若い夫婦が、それぞれフルタイムで働いて家計を支えるライフスタイルを選択するようになり、保育園に子どもを預けながら働き続ける上で、職住近接という条件が、子育て世帯にとって居住地選びの重要な要素になっています。夫婦二人の勤労収入に東京都の手厚い少子化対策が加わることによって、少なからぬ子育て世帯が、住居費がある程度高くなっても、通勤時間の短さや利便性の高さといった都心に住むメリットを選択していると考えられます。

 一方で、東京都における天井知らずの住宅価格上昇と手厚い少子化対策により、今後、低所得の子育て世帯や、支援の外に置かれた子どもを持たない世帯などが、都内に暮らし続けることが難しくなるかもしれません。

 また、大半の自治体が、財政的に東京都並みの支援で追随することは困難です。無償化政策や現金給付などの支援策については、地域差が著しく拡大し過ぎないよう国による財政的補完を検討することや、国と都が「支援策をどこまで手厚くするか」について調整を図ることも、今後の課題であると考えられます。
(日本総合研究所 調査部 主席研究員 藤波匠)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.15からの転載】


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