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続く採用難、人財の定着・育成が競争力の源泉に 大同生命保険の中小企業調査、求められる「収益構造の転換」

 大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2026年5月度は「中小企業の人財戦略・物価上昇の経営への影響」をテーマに調査を行い、結果をこのほど公表した。調査は全国の5068社の中小企業経営者を対象に、5月1日~28日にかけて、訪問、またはZoom面談で行った

 全体の景況感は、「現在の業況」(業況DI)がマイナス12.3ポイント(前月差マイナス0.1ポイント)と5カ月連続で悪化。「将来の見通し」(将来DI)はマイナス5.9.ポイント(前月差プラス0.7ポイント)と4カ月ぶりに改善したが、引き続き低調な数値となっている。

■半数が採用活動を行うも、7割は人数が充足せず

 2025年度の人財採用については、約半数の企業が「採用活動を行っている」と回答したが、そのうち約7割の企業が、採用人数が充足しておらず、採用活動に苦慮している。従業員規模別では「21人以上」の企業の約9割が採用活動を行っているにもかかわらず、6割以上で「採用できたが不足」または「採用できなかった」ことが分かった。

 2026年度の人財採用については「採用予定(既に採用)」と回答した企業は24%。「検討中」(25%)も合わせると、約半数の49%企業で採用意向があった。従業員規模別では「11~20人以上」の企業で73%、「21人以上」の企業では87%の企業で「採用意向あり」と回答しており、中小企業でも人財採用が活発に行われていることがうかがえた。

 人手不足への対応策は、「充足していない」企業も「充足している」企業も、上位3位は「採用条件(賃金・処遇等)の改善」(38%、30%)、「従業員のリスキリング(資格・技術などの習得)」(32%、27%)、「従業員のマルチタスク(同じ人が複数業務を担当)」(29%、26%)だった。

 人財確保・人財育成に関して経営者たちからの自由回答では、「就業条件を柔軟化して幅広い人財を確保することで工夫している」(サービス業・東京)、「従業員の国家資格取得支援を行っている。また、賃金や労働条件を見直したことで採用状況が改善した」(建設業・兵庫)、「障がい者雇用を進め事業拡大」(サービス業・愛媛)、「地元の工業高校や職業訓練校と連携して人財を確保している」(建設業・沖縄)などの取り組みが寄せられた。

■国際情勢の変化に伴う物価上昇、9割が経営への影響懸念

 国際情勢に伴う現在の物価上昇について全体で見ると、「非常に不安を感じている」(23%)と「かなり不安を感じている」(26%)の合計が約半数となり、多くの企業が強い不安を感じていた。特に、現在の自社の業況を「悪い」と判断している企業ほど不安の度合いが高く、「強い不安を感じている」企業は約7割に達していた。

 具体的な経営への影響は、全体としては「固定費の節約」(35%)が最も多く、次いで「収支の赤字化」(33%)、「燃料・原材料不足」(30%)だった。自社の業況を「悪い」と判断している企業では、「収支の赤字化」が50%と最も高く、「廃業や大幅な事業縮小」との回答も24%と高い割合を占めた。

■リスクや不安に「新規ルート開拓」や「生成AI活用」などで対応

 経営者たちに、現在の物価上昇やコスト増加に対して直面している課題を自由回答で聞いた。その結果、「材料費高騰分を顧客に転嫁できず自社で負担しているので収益が厳しい」(建設業・青森)、「今月になって、部品の注文受付を制限する旨の連絡があった。製造を制限せざるをえず困っている」(製造業・群馬)、「燃料・資材高騰により今後、請け負っている工事も中断する懸念があり不安」(建設業・岐阜)、「オイル交換周期の見直しなど節約徹底しているが限界もある」(運輸業・愛媛)などの切実な現状が寄せられた。

 一方で、「新規仕入れルートを開拓し、仕入れコストを削減した」(小売業・宮城)、「生成AI活用を営業管理業務に取り入れることで営業コストを削減することができた」(サービス業・東京)、「先行して在庫確保を行い供給不足のリスクを回避している」(卸売業・福岡)など、創意工夫している点も寄せられた。

■専門家、「収益構造の見直しが重要」

 今回の調査では、物価上昇や原材料不足を背景に、中小企業の売上・利益・資金繰りが同時に悪化し、収益環境が依然厳しい状況が浮かび上がった。また、採用活動を行った企業の約7割で採用人数が充足しておらず、人財確保の難しさが改めて示された。

 調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、人手不足への対応について、「採用できる人を待つだけでなく、今いる人財の力を引き出す視点が一層重要」と指摘。「賃上げ競争では中小企業が不利になりやすいため、地域ネットワークを通じた紹介やSNS等による情報発信を工夫するとともに、リスキリングやマルチタスク化、 外部人材・シニア人材の柔軟な活用により、限られた人員でも生産性やサービス品質を高める体制づくりが求められる」とした。

 現在の国際情勢の変化に対して、多くの企業が経営への影響に不安を感じている点については、「コスト削減だけで対応するには限界がある」とし、「価格転嫁や取引条件の見直し、調達先の分散、高付加価値の商品・サービスへの転換を通じて、収益構造を見直すことが重要」とアドバイス。また、地域のネットワークや紹介を軸とした販路拡大も重要だとし、行政や金融機関による支援の充実にも期待を寄せた。


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