世界各地で分断と紛争が深刻化し、既存の国際秩序が揺らぐ今、アジアから「新しい平和の形」を提示しようという野心的な試みが動き出した。
今月24日から25日にかけて、東京都内のホテルなどを会場にアジアを代表する賢人らが来日し、「調和を共創する:アジア対話(Harmony by Design: Asia Dialogue)」が開催された。主催は、今年で設立40周年を迎える笹川平和財団(角南篤理事長)だ。
▽「真の調和は行動によって生まれる」
笹川平和財団は「2026年は当財団にとって40周年の節目。多様性を尊重し、包摂的で、持続可能な平和の実現のために何ができるか、どのようにできるかを考える機会としたい」と意欲的だ。
かつて「アジアの課題はアジアで解決する」という言葉があったが、今回の会議はそのスローガンを実務レベルに落とし込むための第一歩となりそうだ。
会議のテーマである「Harmony by Design(調和を共創する)」には、真の調和は偶然生まれるものではなく、意図してデザイン(設計)し、行動することによって生まれるものだという強いメッセージが込められている。世界が不透明な時代に突入する中、東京で交わされた「アジアの知恵」と「日本の若者の熱意」の融合が、これから、どのような一石を投じていくのか。その議論の行方に注目が集まった。
▽世界の平和リードしてきた賢人が一堂に
今回の会議がこれまでの国際シンポジウムと一線を画すのは、その徹底した「アジア視点」にある。かつての国際政治は、少数の「大国」がルールを決め、他国がそれに従うというモデルが主流だった。しかし、多様な文化や歴史を持つアジアでは、そうした一方的な価値観の押し付けが限界を迎えているという実感が広がっている。
24日のアジア賢人会議(非公開)では、バングラデシュ暫定政府首席顧問でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏をはじめ、インドネシアのウィラユダ元外務大臣、タイのリークパイ元首相といった、地域の平和をリードしてきた「賢人」たちが一堂に会した。彼らが議論したのは、西洋モデルの模倣ではなく、アジア固有の文化的知恵(調和、共感、連帯)に基づいた「平和のインフラ」の設計だ。
本会議は、ユヌス氏はじめ賢人ら4人のほか、白石隆政策研究大学院名誉教授らが参加。アジアの存在感が世界的に高まる一方で、経済格差や社会不安、地政学的緊張など複合的な課題が深まっていることに加え、SNSやAIなどの急速な技術浸透により、若者の不安が既存の政治・社会システムへの直接的な不満として表れやすくなっている点が、共通の課題として指摘された。

25日のレセプションパーティーでは、元タイ首相のチュアン・リークパイ氏は「この先、世界の共通課題に当たっていくにあたり、多くの話し合い、そして交流の機会となるよう願っています」と発言。
スリランカのセバランカ財団会長のハルシャ・クマラ・ナバラトネ氏は3代にわたり笹川家と交流があるとしたうえで「南アジア、東南アジアのために日本には、もっと強くなってもらいたい。日本の若者にも会ったが、彼らのリーダーシップにも感銘しました。ぜひ日本の将来を担ってほしい」と日本の若者に期待を寄せた。

▽賢人と若者が語り合う
一連のイベントのハイライトの一つが、25日に開催された「次世代アジア平和構築フォーラム」。ここでは、ユヌス氏とウィラユダ氏の2人の賢人が、平和活動に取り組む団体のスタッフや高校生、大学生など若者ら約60人と意見交換するなど交流。
フォーラムの冒頭、同財団の主な取り組みが説明された後、フォーラムを共催した一般社団法人「かたわら」(横浜市)の高橋悠太氏が「平和に向けて人々の価値観は共有できる。若いみなさんと知恵を絞っていきたい」と挨拶。

角南篤理事長は「自由と平和は若い人たちが先導してきた。インターネットやSNSなど新しいツールを用いて平和を考えてほしい。本日の賢人とのやりとりを通じて平和に向け何かを感じ取ってください」と呼びかけた。

▽「想像力の重要性」強調
「賢人との対話セッション」が始まると、賢人を見つめる若者らの眼が一段と輝きだした。まず、ノーベル賞受賞者のユヌス氏が「私たちの時代と今の時代はテクノロジーが違う。昔は携帯電話もなく、私たちには制約が多かったが、みなさんは可能性にあふれていて、世界を自由に設計できる」としたうえで「テクノロジーをどう使うか。想像力が重要で、人に指示されずに自分で答えを見つけてほしい」と指摘。「みなさんはクリエーターです。ただ、想像力がなければ現実はその先には行けない。世界を変えるためには自分自身が変わらないとだめです」と平和の実現に向け、想像力の重要性と自己変革の必要性を呼びかけた。

続いてウィラユダ氏は「日本のみなさんは幸運に恵まれているということをまず認識しないといけません」と、アジアの近隣諸国では紛争が起き、貧困も蔓延しているという事実を投げかけた。さらに「いま自分が置かれている環境に感謝し、そうでない国々への思いを大事にしてほしい」と強調。最後に「私たちの近隣諸国が平和でなければ、平和は訪れない。近隣諸国にも手を伸ばして、東南アジアとして平和であることを担保しないといけない」と足元の平和の重要性を訴えた。「平和」について語る2人の賢人の言葉を、若者らは一言も聞き漏らすまいと聞き入っていた。

▽アクションプランも作成
質疑応答の時間では、参加した若者の「平和を目指したいが現実の前に無力感を感じることがある。そのときはどうしたらいいか」といった質問には「人類は息を引き取るまでアクティブでクリエイティブであるべき」(ユヌス氏)と常に行動的でいるべきとの見方を示し、「高齢になってからいかに働くべきか」という問いには「前職で使ったスキルを第二の人生でも使ってほしい。知識や豊かな経験は有益です」(ウィラユダ氏)とアドバイス。若者らは賢人の丁寧な回答にうなずいたり、熱心にメモを取ったりしていた。
午後には賢人と参加者によるグループディスカッションが行われ、各グループは平和に向けたアクションプランを作成し、発表した。
同財団は「アジアの平和」を作るために、今後も若者らを中心にして継続的にフォーラムを実施していきたいとしている。

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