b.[ビードット]
イメージ

日本円で「X to Earn」を実現 プラットフォーム「アニカナ」 ガイドライン作成目指し業界団体設立

 生命を吹き込む神秘的な存在

インターネットの次世代型と呼ばれる「Web3.0」という言葉を聞かない日はないだろう。岸田文雄首相は2022年10月、所信表明演説で「メタバース、NFT(非代替性トークン)を活用したWeb3.0サービスの利用拡大に向けた取り組みを進めます」と触れ、政府としても経済政策の中で、普及に向けた環境整備を表明した。経済産業省には「大臣官房Web3.0政策推進室」も設置され、法律の整備や研究支援、人材育成などが検討されている。
では、Web3.0とは何か。

新しい流行語ではありがちなことだが、明確な定義は存在せず、語る人の数だけ、その定義があるといっていいくらい、多様な概念となっている。そのことが、Web3.0への理解が進まない要因ともいわれている。
ただ、政府をはじめ、大手企業などが新たなビジネス分野として注目をしており、見過ごすことはできないだろう。

インターネットの次世代型と呼ばれるWeb3.0は、現時点では、「暗号資産(仮想通貨)などで用いられているブロックチェーンの技術を活用した非中央集権型、または分散型のインターネット」というまとめ方が最大公約数的といえる。

そんな中、ブロックチェーン、AIなどを用いた情報通信処理に関するシステム開発を手がけるレヴィアス株式会社(東京、田中慶子代表取締役)は、Web3.0の日本初とされるプラットフオーム「アニカナ」を開発した。

この名前の由来は「アニマ」(Anima、生命を吹き込む)という言葉と、「アルカナ」(Arcana、神秘)という言葉を掛け合わせ、「アニカナ」(ANICANA )とした。二つの言葉の合成により、このプラットフォームを「生命を吹き込む神秘的な存在」と位置づけた。

 業界団体を設立

あいさつする田中理事長

このプラットフォーム「アニカナ」とは?
Web3.0によるブロックチェーンや、ブロックチェーンに関連するシステムを使い、さまざまな体験をデータ化することで、新しい経済的な価値に変換することができるサービスや商品の総称を示す。

開発の背景には、世界で流行しつつある「X to Earn」という、「何かをすることで(暗号資産などを)獲得できる」という、新たな経済行動としての発展が期待できることがある。具体的には、「X」には「Play(プレイ)」「Learn(学ぶ)」といった単語が入り、「Learn(学ぶ)to Earn」、つまり学ぶことで稼ぐことができる、そんなプラットフォームがアニカナだ。

ただ、日本ではこれまで「X to Earn」のサービスはほとんど利用されていないのが実態だという。実際、このサービスを活用するには、暗号資産に詳しい人でなければ使えないといっていいほど、一般的な消費者に参加は容易ではない。

また、暗号資産ではなく、現金やクレジットカードでサービスを活用する場合も、資金決済法、景品表示法など法的な壁がいくつもあり、企業にとっても新規参入の障壁となっている。

このような問題点を克服するため、レヴィアスが開発したプラットフォームのアニカナは「現行の法の枠組みの下で、法定通貨(日本であれば円)による『X to Earn』を実現することができる」としている。

そのアニカナの普及や適正な利用を目指し、一般社団法人日本アニカナ業協会(田中慶子理事長)を昨年11月に発足させた。さまざまな企業によるビジネスの事例紹介や、事業の適正化を図るためのガイドラインの作成など、アニカナの普及、開発支援を活動内容としている。

日本アニカナ業協会は今年2月9日、東京都内で設立の説明会を開いた。田中理事長は、設立の狙いについて「Web3.0のプラットフォームであるアニカナを活用していただき、人々の生活を豊かにすることだ」と強調した上で、「日本においてWeb3.0はまだ黎明(れいめい)期であり、利用者の保護が大切だ。業界内の自主規制が必要であり、さまざまな業種の企業に、この協会への参加を呼びかけたい」と話した。

アニカナの仕組みを説明する小町氏

 革新的なインフラ

次にアニカナの開発に携わった、レヴィアスのディレクター小町博幸氏が、アニカナの特徴を説明した。
小町氏はアニカナの特徴について、「X to Earn」における革新的なインフラだと指摘し、次の3点を挙げた。

① 暗号資産をまったく利用しないで、法定通貨(円)だけで「X to Earn」が実現できること。
② 暗号資産取引所などの口座を必要としないことで、ECサイトで買い物をする程度の比較的簡便な操作ができる。
③ 法律家らによる検証を行い、現行の日本法の枠組みで社会実装が実現した。

小町氏は「これまでの課題を克服することができたのが、アニカナだ。『Learn(学ぶ)to Earn』のほか、『Health(健康になることで)to Earn』では、国民の健康意識の向上などにつながることを期待したい」と意気込みを語った。

実際、教育開発や出版を手がけるワークアカデミー(大阪市)は2月8日、レヴィアスからブロックチェーン技術の提供を受け、学んだ経験を資産に変える、「Learn(学ぶ)to Earn」の実証実験を行ったと発表。受講生たちが「学んだ経験」自体が資産に還元できることを検証したという。受講生たちの体験・経験・スキルが資産価値「NFT(非代替性トークン)」となり、そのNFTを円に換金することができ、さらに市場で売却することができるという。

ワークアカデミーはアニカナについて、「ブロックチェーン技術を使って学んだ経験を記録し、進学や就職・転職を経ても、生涯を通じて『学びの記録』が蓄積されていくこと、また学んだ経験が資産となり価値を生む『Learn(学ぶ)to Earn』についても、今後検証を進めていく」としている。

会見後、写真撮影に応じる田中理事長ら(左から小町氏、田中氏、河合氏)

 利用者の保護

最後に、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業のパートナー弁護士河合健氏が、アニカナについて、法的な立場からコメントした。河合弁護士は「Web3.0への期待は大きい一方で、利用者の保護は重要だ。活用に当たってルールをどう作っていくのか、業界で自主的に取り組むことが必要だろう」と指摘した。

私たちは現在、GAFA=「ガーファ、Google(グーグル)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック、現メタ)、Amazon(アマゾン)」と呼ばれる巨大IT企業が提供するプラットフォーム(基盤)を介し、個人情報を登録することでさまざまなサービスを享受している。しかし、課題もある。それらの巨大IT企業個人が収集した個人情報を、ビジネスに勝手に使われたり、情報漏れがあったりしたこともあるからだ。

そんな問題を解決しようと生まれたのがWeb3.0。これはブロックチェーンの技術で、情報の漏えい、情報の改ざんの危険性が減って、利用者が安心して利用できるといわれている。

ただ、この日本では規制や税制などが整備されておらず、早急に対応しなければ、世界の流れに遅れることになる。Web3.0のプラットフォーム「アニカナ」を「社会のルールに適合した革新的なサービスの創出から日本経済と国際社会に貢献することを目指したい」(田中理事長)としているが、利用者がWeb3.0のサービスを安心して体験、活用できるためには、官民一体となって環境整備を進めることが今、求められている。


関連記事

flash

スタートアップ

スポーツ

ビジネス

地域

政治・国際

株式会社共同通信社