5月、春を越えて夏らしい日も増えてきましたね。暖かいというより暑いといった方がしっくりきます。湿気のジメジメも加わり、本格的な酷暑となるのも時間の問題です。
そんな時に行きたいな、と頭をよぎるのが「避暑地」です。高原の冷涼な空気の中で過ごす休日は、リフレッシュに最適ですよね。そこに温泉もあれば言うことなしです。今回はそれを叶(かな)えてくれる岩手県の秘湯「藤七(とうしち)温泉 彩雲荘(さいうんそう)」をご紹介します。

岩手県八幡平市の山中にある藤七温泉は、標高1,400メートルの「東北一の高所に湧く天然温泉」。十和田八幡平国立公園内に位置し、彩雲荘という一軒宿のみの温泉地です。
背の低い高山植物に囲まれた天空のような空間に、山小屋風の建物がポツンと一つだけという、まるで映画のワンシーンのようなロケーションです。冬季は雪深く、温泉へ通じる県道が通行止めになるため、毎年4月下旬から10月下旬までの約半年間のみ営業しています。そんな高地にある藤七温泉は、夏季でも冷涼な気候で避暑に最適な場所です。

お風呂は、男女別内湯、男女別露天風呂(宿泊者専用)、混浴露天風呂など、湯船にすると10カ所以上あります。
露天風呂の眺望は圧巻で、岩手山をはじめとする山々の大パノラマは、ここでしか味わえない開放感で気持ちが良いです。天気に恵まれれば、時間帯によって日の出、雲海、満天の星の中で湯浴みを楽しめます。私が宿泊した際は運よく快晴で、夜の露天風呂では流れ星を見ることができました。残像が残るぐらいの明るい流れ星で、湯に漬かりながら感動したことを覚えています。
ちなみに内湯は、昔ながらの風情を残す木造の湯小屋で、とても趣があります。

泉質は、単純硫黄温泉(硫化水素型)。これぞ温泉、というような美しい乳白色のお湯は、程よく甘い硫黄が香り、アロマテラピーのようです。肌触りはサラサラとやさしく、可愛(かわい)い湯の花が身体を包み込み、スベスベ感もあります。湯船の温度は基本的にぬるめなので、景色を眺めながらのんびり長湯をするのがおすすめです。蓄積した疲れと気だるさがスーッと抜けていくように、だんだんと癒やされていくのを実感できます。

彩雲荘のハイライトは「混浴」の露天風呂。女性の方は少し抵抗感があるかもしれませんが、女性専用の露天風呂もあるので、ご安心ください。また、乳白色の濁り湯のため、湯浴み着やバスタオルを使用すれば、混浴露天風呂にも挑戦できるかもしれないですね。

食事は、朝夕ともバイキング形式です。新鮮な山菜や川魚など、地元八幡平の食材を使用した料理が並んでいます。
川魚の塩焼き、ヒメタケやワラビ、タラの芽を使った天ぷら、みそ汁など、見た目の豪華さはありませんが、食材の味がしっかり活(い)きていて満足でした。バイキングだと、食べたいだけ食べられるのが嬉(うれ)しいですね。

文明から隔離されたような大自然の中にある「藤七温泉 彩雲荘」。遠くて行きづらいようなイメージを持たれるかもしれませんが、岩手の中心地・盛岡市内から車で1時間ほどと、アクセスは悪くありません。
天空の絶景露天風呂の中にいると、日々の疲れや悩みなんて、ちっぽけなものに思えてくるから不思議です。心も身体も夏の気だるさもスカッとリフレッシュできますよ。
【藤七温泉 彩雲荘】
住所 岩手県八幡平市松尾寄木北の又
電話番号 090-1495-0950
【泉質】
単純硫黄温泉(硫化水素型)/泉温90.6度/pH:3.4/湧出状況:混合泉/湧出量:不明/加水:あり/加温:なし/循環:なし/消毒:なし
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,200以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。
https://note.com/ayumukomatsu13/