塩焼き、みそ煮、竜田揚げ、シメサバ、南蛮漬け…。定番の家庭料理に人気のサバ、特にマサバは日本人にとてもなじみ深い魚だ。水産資源としてのマサバには、産卵場所や分布域といった生物学的特徴から、「太平洋系群」と「対馬暖流系群」という二つのグループがあると考えられており、各グループ単位で資源が管理されている。中でも近年の漁獲量の落ち込みが激しいマサバ太平洋系群について、新しい動きがあったので書いてみたい。
さて、海中の魚の数を正確に把握することは難しいが、なんとかそれに近づけるため、水産庁は「資源量」を公表している。さまざまな調査・評価手法を用い、生息量推定値を算出しており、2025年現在、手法や情報量の違いから精度にグラデーションはあるものの、日本海域の192種を資源評価対象魚種として選定している。
一方で、「漁獲量」も注目されている。漁獲量は漁業の成果であり、各船の漁獲能力や天候、漁業者数などの変数により左右されるとはいえ、経年の漁獲量変化は資源状態を推し量る一助となるからだ。
そんな中、今年1月に水産庁が発表した24年度資源評価結果では、マサバ太平洋系群の資源量推定値が大幅に下方修正され、業界に激震が走った。368万トンだった23年度の資源量(評価年度での予測値)が122万トンへと7割減り、卵を産み資源を未来につなぐために必要な親魚の量はなんと8割減と公表されたのだ。これは資源量推定値の高さにもかかわらず、漁獲実績が減少し続けた過去5年を分析し、サバの成長・成熟の遅れが主要因と突き止めた結果、評価手法(資源評価モデル)を現状に合わせてアップデートした結果という。
マサバ太平洋系群の危機的な状況が明白になった以上、漁獲可能量(TAC)が来年以降、大きく削減されることは避けられない。ゴマサバと合わせた23年の漁獲実績10万トンに対し、24年に35万トンだった漁獲枠を、現実に即していく必要があるだろう。可能な限り未成魚を残し成魚を狙った漁に移行することで、私たちがサバを食べ続けられる未来があるようにしていただきたい。
研究者の話によると、海はまだまだ未知のことだらけだという。温暖化も待ったなしだ。科学の正確性向上のためにも、今後、研究支援が大きく進むことを願う。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.7からの転載】