5月も終わりに近づき、暑さを感じる日が増えてきました。本格的な夏の季節が、すぐそこに迫ってきていますね。夏といえば、やはり海に行きたくなるものです。温泉好きの私にとっては、海に行くときも温泉をセットで考えてしまいます。この気持ちに共感してくれる方も多いのではないでしょうか。温泉大国の日本には、そんな願望に応えてくれる温泉地がたくさんあります。
今回は、そんな温泉の一つ、和歌山県の「南紀白浜温泉 おんせん民宿 望海」をご紹介します。
南紀白浜温泉は、和歌山県白浜町の海沿いに湧く温泉地。その歴史はとても古く、日本書紀や万葉集に登場することから、愛媛県の道後温泉、兵庫県の有馬温泉とならび「日本三古湯」の一つに数えられています。戦後、新婚旅行のメッカとして栄え、現在でも多くの観光客でにぎわいを見せる、人気の温泉地です。
白い砂浜が美しい「白良浜(しららはま)」を中心に形成されたリゾート情緒あふれる温泉街は、大規模な旅館やホテルが立ち並んでいます。今回ご紹介する「おんせん民宿 望海」は、温泉街の中心に立地し、白良浜から徒歩5分ほど。「民宿」と名の付く通り、周囲の大型施設とは打って変わり、素朴でレトロで木造2階建てのアットホームなお宿です。
お風呂は、男女別の内湯のみ。浴室には、4人サイズの湯船が一つのシンプルなつくりです。そこには、湧出温度が80度を超える源泉が、加水・加温・循環・消毒のない「完全掛け流し」で、静かに注がれています。そのため、浴槽の湯温は、かなり熱めです。入浴する際は、セルフで加水をするか、木の混ぜ棒で湯もみを行い、適温にします(私は湯もみのみで、源泉100%の湯浴みを楽しみました)。湯温がぬるくなり過ぎた場合は、温泉のバルブを開放すると、源泉の湯量が調節できるため、好みの湯加減を楽しむことができます。
泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉。湯の花などで少し白濁したお湯からは、鼻孔をくすぐる甘い硫黄の香りが漂います。飲泉すると、甘味と程よい塩ダシ味に硫黄の風味が重なり、上品な玉子スープのような味わいでした。ツルツルスベスベでとろみを感じる肌触りが心地よく、美容液に浸っているかのような感覚。湯上りは、そのとろみが肌に乗り移り、しっとりスベスベ肌を実感することができます。
こちらの温泉は、南紀白浜温泉の数ある源泉の中でも、長い歴史があり、「名湯」として名高い「甘露の湯」を使用しています。この源泉を引いている施設は少なく、それを完全掛け流しで堪能できる「望海」は、とても貴重な存在です。
海沿いの温泉なので、食事は新鮮な海産物がめじろ押しです。
この日の夕食は、マグロ、タイ、イカのお刺身、アジの南蛮漬け、イカ、エビ、ムール貝、野菜、豚バラ肉がこれでもかと盛り込まれた海鮮蒸し鍋など、まさに海鮮尽くしのメニュー。味はもちろんですが、ボリュームもあり、大満足でした。メインではありませんが、前菜の「梅の甘煮」が、驚くほどおいしかったです。さすが、梅どころでもある和歌山県の宿ですね。
南紀白浜は、関西圏の方だとなじみ深いと思いますが、関東圏の方からすると、遠くの観光地というイメージがあるかもしれません。しかし、南紀白浜空港を利用すれば、東京から約1時間で訪れることができるため、意外とアクセスしやすいところでもあります。
これから始まる梅雨を乗り越えれば、いよいよ夏本番。海で遊んだあとの疲れを、温泉で癒やすことができれば最高ですよね。
【南紀白浜温泉 おんせん民宿 望海】
住所 和歌山県西牟婁郡白浜町2324-2
電話番号 0739-42-2673
【泉質】
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉(低張性 中性 高温泉)/泉温86.3度/pH:7.4/湧出状況:掘削自噴/湧出量:毎分355リットル/加水:なし(セルフ)/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆完全掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。