―黒いダイヤモンドと出会った経緯は。
私の家系は祖父の代から金細工師で、加工などの製造技術や商品開発、顧客管理など家業のイロハを学び、宝飾品に対する審美眼を磨いてきました。1999年にコンサル会社を設立し、高級ジュエリーのニューヨーク出店や欧州の高級ブランドの商品開発にも携わってきました。2022年に「宝石のブランド」を買いたいと思って探したところ、23年にKORLOFFの創業者と出会いました。
―出会った当初のKORLOFFの印象は。
パリには“ジュエリーの聖地”といわれる「ヴァンドーム広場」があり、世界的に有名な高級宝飾店やファッションブランドが集まっていますが、そこの名だたる宝石店と肩を並べる水準には、まだ達していなかったと感じました。ただ「絶対に世界の有名な高級宝石ブランドに匹敵するような“世界的なブランド”に育てることができる」との確信が私にはありました。KORLOFFにはまだまだ埋もれている大いなる可能性があると思ったのです。私と一緒にこれまで高級ジュエリー、高級ブランドの世界で働いてきた優秀なスタッフと力を合わせれば「必ずKORLOFFが本来持つ輝きを引き出すことができる」と確信したのです。
―その確信の源泉は。
一つは実業家、起業家としての私の“直感”です。もちろん直感が間違うこともありますが、KORLOFFに関しては間違った判断ではないという自信がありました。それだけKORLOFFの黒いダイヤモンドの芸術的なフォルム、また黒いダイヤモンドの石そのものが持つ面白い物語性に、世界的なブランドに育つ源泉を見つけたのです。1978年にKORLOFFを創業したフランス人のダイヤモンドトレーダー、ダニエル・パヤシュール氏も「この黒いダイヤモンドが自分を呼んだ」というふうな話をしていました。私も同じく黒いダイヤモンドに引き寄せられたのです。
◆CEO就任後、共同買収◆
―2023年10月のCEO就任以降の取り組みは。
これまでの私の経験から、やるべきことは明確でした。側近のスタッフと一緒にKORLOFFを世界的ブランドに育てるためのビジョン、計画を練り上げました。KORLOFFの商品コレクションの中から最も大切だと思われるものを残し、世界的ブランドにふさわしい商品構成に組み替えていきました。同時に工房との関係も見直して、優れた仕事をしてくれる工房とのみ仕事をする体制にしました。それから一目でどこの工房で作られたかが分かる特色やスタイルを持つコレクションを作ることに注力しました。KORLOFFの商品コレクションはやはり歴史ある優れた工房に基盤を置くものでなければならないのです。そしてKORLOFFのイメージを打ち出す商品構成を整えたところで、そのイメージをどうやってお客さまに伝えていくか、どうやって語るかという“イメージの構築”に取り掛かりました。さらにこれまでの販路の見直しも行いました。取引を終える決断をした会社もあります。日本の販路では長年お世話になっている宝石製造販売会社ナガホリ(東京都台東区)のように、これまでのパートナーシップを強固にしたところもあります。

―2025年9月の共同買収の枠組みは。
世界のさまざまな海外企業に投資しているシンガポールの投資家一族に投資を募りました。この一族は宝石ビジネスへの投資は初めてでしたが、KORLOFFの過半数の株式を持っています。KORLOFFの管理職の皆さんにも投資をお願いしました。株式の保有割合はシンガポールの投資家一族が最も高く、次いで私、KORLOFF管理職の順になります。
◆CEOはオーケストラの指揮者◆
―心強いスタッフ、仲間がいますね。スタッフと一緒に仕事を進めていく上で心がけていることは。
一番大切なことは全てのスタッフがいま、自分は何のために働いているかを明確に自覚していることが大事だと思います。自分が何をすれば会社に貢献できるかが明解であることがスタッフのモチベーション(やる気)を高めます。また自分にない能力のあるスタッフを大切にすることが重要です。自分より若くても自分にはできない能力がある才能あふれるスタッフに囲まれていることが大切なのです。例えると、私はオーケストラの指揮者。私は指揮者としてみんなを統率しますが、各団員(スタッフ)はそれぞれ持ち場があり得意分野がある。それを美しい旋律にまとめ上げていく指揮者のように、いかにみんなの才能をまとめていくかが私の役目だと考えています。
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