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東京ウィメンズプラザホールで開催

農業現場のジェンダー平等を考える 共同通信社と日本農業新聞のシンポジウム

男性も巻き込んで女性活躍推進プロジェクト

 大林氏は、女性が活躍できる職場環境の整備、女性活躍推進プロジェクトについて、JAグリーン近江の取り組みを紹介。他人任せの職場風土からの脱却が出発点だったと振り返り、

 職員一人一人がチャレンジする気持ちを後押しする、女性が働き続けられる環境を作っていくことを念頭に、女性推進プロジェクトを発足させたと経緯を説明した。男性にも加わってもらい、時間単位の年次有給休暇やオフィスカジュアル、職員が集う機会の創出などさまざまな提案がなされたという。時間単位の年次有給休暇は、例えば医療の診察や子どもの行事など短時間の用事に対応することができる。「小1の壁」「小4の壁」などを背景に、育児時短勤務の期間拡大も提案された。これらの実施には周囲の負担が増えるなど課題もあり、同時に仕事の分担を考えていくことも大切とし、キャリア形成の支援などで将来どんな仕事に挑戦したいかを考える機会を用意することで、将来の管理職候補者が増え、人材の裾野が広がることにつながると話した。

 また、少数派が3割を超えると発言力と影響力が高まり、多様な意見が意思決定に反映され、組織の変化が進むという「黄金の3割」を強調。多様な声を組織の力にすることが、地域の未来を拓くとまとめた。

大林茂松グリーン近江農業協同組合代表理事組合長

 

女性の自己決定権を奪う壁

 長野県で実際に農業に従事する新海さんは、農業女性のウェルビーイングを育む「暮らしFITプロジェクト」を主宰、2児の母親でもある。20年前に結婚を機にレタス農家の一員となった。「ジェンダーというテーマは私にとって難しくセンシティブ」と吐露。現場で生きる女性として「嫁の役割という目に見えない重い空気」があったと当時を振り返った。言われた通りに農作業をし、1日25食のまかないを作る。そんな中である日、地域の人に「新海さんちの子」と言われ、私はただの付属物、自分の人生がないと落ち込んだ。だが、自分の居場所を守るために自分を手放すという経験をするのは自分だけではないと気が付いた。全国の農業女性と話すうちに、女性たちの自己決定権を奪う3つの見えない壁が見えてきたという。仕事と暮らしが地続きであるという「個が消える壁」、ここで死ぬまで生きる、逃げ場がないことからくる「NOと言えない壁」、そして意思決定の場から排除されて「未来が描けない壁」だ。

 そこで、自分を真ん中に置き、生き方を選び取る仕組みを探ろうと、農業女性のウェルビーイングを育む「アグリミー」を立ち上げた。そして半年後、繁忙期でも自分の意思で休めるようになった、初めて夫に本音を伝え、経営について対話できた、自分の歩みに胸を張れるようになった、など確かな変化が見えてきたという。

新海さんは、「作物を育てる私たちがすこやかであること、これこそが持続的な農業のはじまり」だと語る。経済指標と同じように、現場で働く農業者がウェルビーイングの指標を持つことが大切で、「おいしい野菜を作っても、育てている作り手がすりへっていたら農業の未来はない。これまでの自己犠牲をそのまま渡すのではなく、時代にあったバトンを次の世代に渡していきたい」と未来への展望を語った。

農業者で暮らしFITプロジェクト主宰の新海智子

 

制度化は国家の役割

 後半は登壇者のディスカッション。姉歯氏は、前半の議論を受けて、足元からの改革、制度改革を訴えるべき時が来ており、制度化は国家の役割。壁を一人で乗り越えるのは難しいと強調。現場で20年間試行錯誤を繰り返してきたという新海さんも、辛さを乗り越えた転機は、地域から離れて農業業界以外の人に話を聞いてもらった時だったと振り返る。一人で考えると自分の力不足と思ってしまうことも、地域を出ると「私なら嫌だ、引くな」という人がいて、誰でも辛いんだということが分かり、客観視できる。そしてようやく、どういう未来を創りたいのか思考できるようになったという。

 男性がこの改革に加わることと、女性の比率を上げていくことの重要性を説いたのは大林氏。「女性の意見は男性とは違うし、その声が大きくなると男性の役員が女性を理解していく。理解すると理事会の運営がうまくいき、話し合いがまとまっていくのがメリット。女性は1人や2人ではなく、5人くらい必要。女性役員が大きな力となって多様な意見を出せば、理事会の雰囲気も変わってくる。愚直にやっていけば理解し合える」と積極的だ。

 農業分野を含め、格差解消に積極的な市民運動が多く、成果も獲得しているのが隣国、韓国。姉歯氏は、韓国の女性運動の歴史を概説した上で、農村の女性に限って行われる特殊健康診断を80歳までに拡大したり、自分が好きなように使える農民手当があったりと、日本には該当制度がないものも多い韓国の現状について、政府の監視や制度作りに尽力してきた女性農民運動、活発な市民運動の成果だと評価した。

ネットワークの重要性

 積極的に活動する女性たちの力を結集するために必要なものの一つが、ネットワーク。山脇氏は、「韓国にはあらゆる業界に女性団体がある。アイスランドも島国で日本と似ているが、女性たちがつながっていて、首相や大統領も女性だ」とネットワークやハブの重要性に言及。会場に来ていた広島の全国農業委員会の女性も「農業、漁業、林業などが集まる場では共通の問題を抱えていることが分かる。後継者がいないなどの問題も同じで、支援を受けて手をつなぐことが大切だ」と話した。

 


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