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「力の抜き具合」で課題解決 中川めぐみ ウオー代表取締役 連載「グリーン&ブルー」

 「日本有数の攻めてる魚市場」として、この連載でも昨年ご紹介した静岡県の熱海魚市場が、またしても素晴らしい試みを始めている。

 今回の取り組みは、〝未利用魚〟を活用した、地元の福祉施設や児童養護施設の食料サポートだ。物価高で食材費のやりくりに頭を悩ませる施設に、市場で値段の付かなかった魚を無償提供している。

 無償提供などの取り組みは水産に限らず各地で増えているが、私が特に面白いと感じたのは、いい意味での「力の抜き具合」だ。熱海魚市場がしていること、それは「セリの後で残った魚の写真を撮って、施設にLINEで送る」ことだけ。魚の種類や数量を細かく説明することも、下処理を代わりにすることもない。施設が写真を確認して「欲しいです」と返信してきたときだけ魚を取っておく。そして空いた時間に施設の担当者が魚市場へ引き取りに来るという、非常にシンプルな仕組みだ。

 値段が付かなかった〝未利用魚〟とはいえ、「サイズが標準より小さい・大きい」「数量が揃わなかった」「調理に少し手間がかかる」など、一般流通に乗せにくいという理由が大半で、どれも新鮮で美味しい魚たち。施設でも熱海魚市場からいただく魚は大好評なのだという。

 1次産業の現場では、どうしても〝規格外〟などが理由で価格の付かない産物がある。廃棄するより、困っている施設の助けになりたいという声を各地で耳にするが、その際によく続くのは「気持ちはあるのだけれど、手間がかけられないから難しい」という言葉。真摯に向き合う方ほど、手間ひまをかけようとして一歩を踏み出せないことが多いようだ。

 そこでぜひ参考にしていただきたいのが、熱海魚市場のいい意味での「力の抜き具合」。自分たちの作業をできる限り簡略化することで実効性と持続性を担保し、地域の課題解決にしっかりと向き合えている。

 熱海魚市場をきっかけに他地域の事例も調べてみると、例えば高知の漁港でも同じように簡略化された取り組みがあった。こちらでは値段の付かなかった魚を、港の一角にある保冷コンテナに「放り込んでおくだけ」。地元の子ども食堂が定期的に回収に来るというシンプルさだ。

 こうした取り組みを見ていると、自治体や地域のハブ組織ができることは、金銭面以外でもいろいろとありそうだ。困っている施設と、食材を提供できる1次産業者を繋ぎ、LINEグループのような身近な連絡網を用意する「場づくりの後押し」。他にも、衛生管理のガイドラインづくりや、受取場所の初期確保など、現場のやりとりを側面支援する黒子としての役割は多々考えられる。無理な善意に頼るのではなく、現場の負荷を徹底して削り、軽やかに関わり合える場をつくる。そんな肩肘を張らない循環の可能性を熱海魚市場から学ばせていただいた。

なかがわ・めぐみ (株)ウオー代表取締役。「釣り・漁業×地域活性」を軸に日本各地で観光コンテンツの企画・PRなどを行う。漁業ライターや水産庁・環境省などの委員も務める。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.38からの転載】


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