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2024年10月に、北海道美唄市で開かれた防災フェア「NOASOBI CAMP」に出展された「WATERMAKER」と「無限水」(ENELL提供)

富岡市とENELL 社が脱炭素、防災で実証実験 12月から「空気から水をつくる」機器使い

 群馬県富岡市は11月22日、「マイボトルの使用による二酸化炭素排出量削減効果の検証」や「災害対応力の向上」を目的に、ENELL株式会社(東京都港区)と連携し、同社が開発した「空気から水をつくる」機器5台を借りて市役所など市内の公共施設へ設置し飲用水を提供したり、防災訓練などで活用したりする実証実験を12月16日から約1年間行うと発表した。利用実績や効果について市民の意見を集め、市内での機器導入の可能性を探る。

 ENELLの事業が今年、東京都のスタートアップ(新興企業)支援事業「TOKYO SUTEAM」の協定事業者である株式会社ソーシャル・エックス(東京都渋谷区)が実施しているアクセラレーションプログラム(第1期)で優秀賞を受賞。「空気から水を作る技術を活用して、どのような社会課題が解決できるか議論したい」というテーマで、ソーシャル・エックスが提供している官民共創マッチングサービス「逆プロポ(逆公募プロポーザル)」を通じ全国の自治体に募集し、富岡市が応募して実証実験の実施が決まった。

 同市は、見込まれる効果として「ボトル交換が不要であるため、プラスチックごみやボトルの運送にかかる二酸化炭素排出量の削減」「市民に対するプラスチックごみ削減に向けた取り組み(マイボトルの使用など)の普及啓発、環境配慮意識の醸成」「災害発生など緊急時における安全な飲料水の確保と災害対応力の向上」を挙げている。

 ENELLによると、同社は世界の水問題が「雨だけに頼る水源」「配管(運搬)が必要」「衛生的な水に転換し、衛生的な状態で維持することの難しさ」から起因しているととらえ、その解決に向け①空気から水を作る技術②川の水や雨水などを塩素などの薬剤を使わずに飲料水基準にする技術(バクテリア殺菌技術)③保存タンク内で水を劣化させずに長期保存する技術④世界最小の逆浸透膜を廃棄水なく使用する技術―という4つの技術を開発。これを活用した「分散型マイクロ水源インフラ」事業を展開している(①は関連特許取得済、②~④は特許出願済)。

 現在、この4つの技術を搭載したインフラ端末製品をリリースしている。富岡市の実験で使うのは移動可能なマイクロ水源「無限水」で、1日当たり最大33リットルの水を空気から生成、同600リットルの雨水や川の水を飲料水に転換する。このほか、同250リットルの水を空気から生成するWATERMAKER CSR-250、同5000リットルを生成するWATERMAKER 5000の計3種類あり、防災やSDGs、BCP、脱炭素などに関心が高い企業や行政、個人に提供している。

 「将来的には、既存水源との融合を行い、浄水施設集約型の水道インフラから、分散型マイクロ水源インフラへの移行を目指したい」という。同社は新たな顧客や用途として、電気と水の自給自足型のスマートハウス、インフラがない場所でのコンテナハウスなどを使ったホテル事業、キャンプ場・グランピング施設の運営、陸上養殖や水耕栽培、人工透析や血液分析などの水が欠かせない医療分野でのサブ水源としての活用、災害拠点の給水スポット活用などを見込んでいる。


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