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データが飛ぶと人生も飛びがち 【岡嶋教授のデジタル指南】

 パソコンやスマホのデータは、ある日いきなり消えます。思春期の恋心のようにはかなく、なくなることが確定的です。

 昔のハードディスクは、壊れる前にカリカリと変な音を立てることがありました。メーカーが意図したわけではありませんが、「そろそろやばい」と身構える余裕を与えてくれました。

 でも今の主流であるSSDは、破局の予兆が分かりにくいです。昨日まで普通に使えていた機械が、爽やかな朝に電源を入れたら何も出てこず、阿鼻叫喚の午前へと姿を変えることはままあります。子どもの写真も、書きかけの原稿も、まとめてお亡くなりです。近年はいろいろなものを電子データに依存していますから、データ滅亡=人生が滅亡の方も多いと思います。

 「うちはクラウドにデータをアップロードしているから平気」とおっしゃる方も多いです。でも、使い方によっては、安心材料にならないので注意が必要です。

 クラウドストレージの多くは同期の仕組みで動いています。手元のパソコンやスマホにあるファイルと、ネットの向こうのデータ倉庫を、そっくり同じ状態に保つ働きです。

 便利なのですが、裏を返せば手元で消したものは向こうでも消える仕掛けです。間違って削除したファイルも、マルウェアにやられてぶっ壊れたファイルも、律義にその状態のまま「同期」してくれます。同期は基本的にどこからでも同じ作業の続きをするための道具であって、安全に保管するための道具ではない点は心に留めておきたいです。クラウドにもごみ箱機能はあるんですけれども、保存期間や容量に制限があるため過信は禁物です。

 ではどうしたらいいのか? 昔から言われているのが「3-2-1ルール」ってやつです。データを「3」個持つんです。元のデータと、コピーを二つです。

 コピーの置き場所は「2」種類用意します。パソコンの内蔵ハードディスクと外付けハードディスクといった具合に、違うものを混ぜます。せっかくコピーを作っても、全部がパソコンの内蔵ハードディスクにあると、これが壊れたときにまとめて消えます。

 そして、コピーのうち「1」個は離れた場所に保管します。ここは重要です。どんなに丁寧にコピーを保管していても、みんなが同じ棚に並んでいたら、火事や浸水、どろぼう被害で派手に一挙に失われます。

 離れた場所と言われると、「極めてめんどくさい」と身構えてしまうかもしれませんが、実家で外付けディスクを1台預かってもらう、くらいで十分だと思います。

 欲を言えば(めんどうですが)、外付けハードディスクは、普段はパソコンから外しておきたいところです。マルウェアには、コンピューターの中のファイルを勝手に暗号化して、元に戻す代わりに身代金を要求してくるものがあります。コンピューターにつながっている機器を片っ端から暗号化の対象にするので、つなぎっぱなしのバックアップ用外付けハードディスクは、一緒に人質になってしまいます。

 なお、バックアップは取って終了ではありません。むしろ、「取ったから安心」と思ってパソコンを雑に扱ったりするとリスクが上がりますし、なによりバックアップが思った通りに取れていないことも多いです。世界的に有名な映画スタジオが作るビッグタイトルでさえ、間違ったコマンドでデータを吹っ飛ばしてしまい、頼みの綱のバックアップが取れておらずスタッフを真っ青にさせるような事態が起こっています。リストア(復元)できないなんて、よくあることなんです。

 バックアップはいざというときに中身を取り戻せて、初めてバックアップと言えます。半年に一度でいいですから、外付けディスクをつないで写真の一枚など開いてみてください。

【著者略歴】

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/中央大学政策文化総合研究所所長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」「プログラミング/システム」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)、「メタバースとは何か」「Web3とは何か」(光文社新書)、「機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜シリーズ」(KADOKAWA)。Eテレ スマホ講座講師など。


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