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「価値づくり志向の戦略的広報・人事」をテーマに開かれたセミナー&ワークショップ

人事・広報は「価値づくりのフロントオフィス」 企業担当者向けセミナーで加藤拓巳氏講演

 企業経営に欠かせないサステナビリティー(持続可能性)や多様性を、いかに消費者の求める商品やサービスへと結びつけるか、人事、広報部門の視点で考える「採用広報セミナー&ワークショップ」(共同通信社主催)が6月19日、東京都内で開かれた。講師の加藤拓巳明治大准教授は、人事、広報部門を価値創造のフロントオフィスと再定義し「価値づくりを起点とした人事戦略・制度設計こそが求められている」と指摘。参加した企業の担当者約40人はグループディスカッションを行い、業種の壁を越えて価値創造への理解を深めた。

 加藤氏はホンダで商品企画やブランド戦略を担当したマーケティングの専門家。講演ではまず、「環境配慮」と消費者がお金を出しても買いたいという「顧客価値」の両立が重要で、多くの企業がサステナビリティーや多様性に取り組んでいるが「日本では環境配慮が価値にならない。稼げない環境施策はするな、というのが今の風潮」と分析した。

 消費者も「環境に優しい商品を買いたい」と言う一方で、財布を開くときには否定的になり、人や社会、環境に配慮したエシカル(倫理的)商品も「盛り上がっていない」のが現状という。これは、環境のため、人権のため、動物のためと言った途端に、消費者は「私のためではない」「価値が低い」と思う「サステナビリティー負債」というバイアスが働いてしまうため。これらの配慮は口にせず、サステナビリティーや多様性を「なんとなく良さそうだ」と思ってもらい、「だからおいしい」という顧客価値に変換する必要があると強調した。

 加藤氏は価値づくりの考え方と具体的方策についても言及した。「誰の困りごとを解決するために仕事をしているのか、常に見える状態にする。価値をつくるのが上手な企業は、解決されてない問題は何か、それを解決したら高いお金を喜んで払ってもらえるか、を徹底的に問い続ける」。困っている人は誰か決まると、必要な技術、素材、PRは一貫して決まるという。

講師の加藤拓巳氏

 

 価値をつくるブランドマネジメントとは「『私たちはこういう問題を解決します』とコンセプトを掲げ、それを実行し、また言って顧客に約束し続ける。この一段一段登る『Say Do Say』をやり続け、顧客にどのように喜んでもらっているのかを見せるのは、人事部、広報部の仕事」と指摘した。

 人事制度については「人は周りを見た時に自分の努力が報われているという相対的な報酬量に敏感なので、頑張った人に報いる」「映画や書籍のように、プロジェクトに貢献した人の名前を出す価値は大きく、人事部がやらなければいけない仕事だ」と提言した。

 日本で意思決定が遅いと言われるのは、根拠が分からない中で議論していることが原因であり、対象を無作為に複数の群に分けて効果を比較するランダム化比較試験(RCT)を導入し、科学的根拠を持って意思決定する仕組みを人事部が仕切って導入しなければいけない、と述べた。

 さらに「失敗を許容する組織の文化がないと成功はない。科学的検証をして、お客さんに価値を評価してもらって、失敗だったものを並べる文化、価値観をつくるのは人事部」という意識を持つよう求めた。

価値づくりの基盤(加藤拓巳氏の講演資料より)

 

 企業の人事、広報部門は「バックオフィス」と位置付けられ、顧客と直接接触する営業、販売部門などの「フロントオフィス」を支える立場と考えられがちだ。加藤氏は、大谷翔平選手が活躍する米大リーグを例に「ドジャースの強さは、勝つことに目的を置き、非凡な判断を下して選手の価値を高め、チームを構築してきたフロントオフィスがもたらしている。一番重要なのは人」と語り、人材をつかさどる人事部門の働きが価値づくりや勝利への鍵を握っていると解説した。

 ところが企業の人事部は「バックオフィス」と呼ばれ、価値づくりには関係ないという立場になりがち。加藤氏は「 “よだれの出る”(消費者がお金を出してでもほしいと思う)サステナビリティーや成果の出る多様性をつくるのは、フロントではなくてはならない。広報部、人事部が経営と密に接して、価値を創造する全社の文化、制度、考え方をつくっていくことが日本の企業には必要だ」と締めくくった。

アイデアをシートに書きながら議論する参加者

 ワークショップでは、参加者は5人ずつのグループに分かれ、ハム、陶器、自動車保険などさまざまな商品・サービスについてコンセプトを明確化し、環境、人権、動物配慮の観点を加えると、どういう訴求ができるか、議論して発表した。

 2時間半余りにわたるセミナー、ワークショップを終えた参加者からは「解決していないニーズに応えることは日ごろ意識していたが、会社として消費者にどう見せるか、サステナビリティーをどう伝えるか、参考になった」「人事と経営の背景を言語化してもらえた。全員がフロントとして、誇りを持って価値づくりに取り組んでいきたい」などの声が聞かれた。


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