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カラフルな色合いが人気のキウイ

【キウイ物語(上)過去から現在へ】商品名変更が成功、中国から世界へ 「キウイブラザーズ」が大人気 国、地域ぐるみで次世代育成

 いまや日本のスーパーで最も人気のある果物の一つとなったキウイフルーツ。茶色い外皮に覆われた独特の“たたずまい”は、日本の食卓にすっかり溶け込んでいる。しかし、そのルーツが中国にあることや、この果物が歩んできた道のりが政治情勢に翻弄(ほんろう)され、あるいは緻密なマーケティング戦略によって切り開かれたものであることは意外に知られていない。

 20世紀初頭、中国からニュージーランド(NZ)に持ち込まれた「オニマタタビ」の種、そう、あの猫を酔わせるというマタタビの原種が、この物語の始まりだ。

 当初は、その味が「グーズベリー(西洋スグリ)」に似ていたことから「チャイニーズ・グーズベリー」と呼ばれていた。転機が訪れたのは冷戦下の1950年代。NZが本格的に輸出を拡大しようとした際、最大の市場である米国で「チャイニーズ」の名を冠した商品が販売上不利に働くのではという懸念が広がった。そこで、茶色の外見がNZの国鳥に似ていることから「キウイフルーツ」と名前を変えた。そしてこの改名が、キウイをナショナルブランドに押し上げる世界戦略の第一歩となった。

 今回、キウイの本場NZを訪れる機会に恵まれた。キウイがNZにもたらされたのは1904年。120年の時を経て、世界各国で愛されるようになったキウイの歩みや栽培の現状、栄養素についての最新の研究結果などを報告する。

▽情熱「zest」と精神「spirit」の組み合わせ

 日本にキウイが本格上陸したのは1960年代後半から70年代。栽培がしやすいことから、NZと同じ温暖な気候条件を持つ地域を中心に瞬く間に広がった。

 80年代に入ると世界的にキウイの輸出業者が増え、生産過剰に伴う価格競争が激しくなり、ブームは一時、沈静化の兆しを見せた。

 この窮地に、NZの生産者たちは一つのブランドの下に結集、「ニュージーランド・キウイフルーツ・マーケティングボード(NZKMB)」が設立され、輸出方法が見直されることになった。

 「鮮やかで、元気で、健康的で、栄養分が高く、活気があり、風味がよく、喜びとエネルギーにあふれている」というキウイのイメージを、情熱を表す「zest」と、精神を表す「spirit」を組み合わせた「ゼスプリ」という造語で表現。これが世界最大のキウイ販売・マーケティング会社の始まりとなり、消費者回帰の契機となった。

ゼスプリの前身として設立されたNZKMBのロゴ

 

▽「キウイブラザーズ」登場

 日本のテレビCMに「キウイブラザーズ」が初めて登場したのは2016年。消費者が受けたインパクトは大きかった。

 日本法人の「ゼスプリ インターナショナル ジャパン」がキウイの認知度を高めようと考案した「グリーンキウイ」と「サンゴールドキウイ」をモチーフにしたユニークな外見。この2体のキャラクターが大ヒット。

 丸っこい体に茶色の外皮。細い手足がついていて、まるで本物のキウイが二足歩行しているような姿。体の真ん中にある断面に見立てた口は大きく割れていて、中は色鮮やかなグリーンとゴールド。リアル感と愛嬌のある外見が消費者の心をつかんだ。毎年新たに製作されるテレビCMを楽しみにしている子どもも多いという。

 「キウイのおいしさを日本に伝えるためにNZからやって来た」という設定だが、いまでは日本だけでなく、世界中で人気を集めるまでに成長した。ちなみに、キウイブラザーズは品種が異なるので本当の兄弟ではないとのオチもある。加えて現在は「ルビーレッドキウイ」も加わり3体のユニットとなっている。

キウイブラザーズはキウイ人気上昇に一役

 

▽栄養素充足率ナンバーワン

 キウイの持つ栄養素は実に豊富だ。

 「サンゴールド」は1個で1日分のビタミンCを、「グリーン」なら1個で不足しがちな食物繊維を補える。そして、いま人気を集めている「ルビーレッド」には、1個で1日分のビタミンCだけでなく、抗酸化作用を持つアントシアニンというポリフェノールが含まれている。

 バナナ、リンゴ、ミカン…。数ある果物の中で、キウイの「栄養素充足率(100gあたりの主要17栄養素の含有量)」はナンバーワンだ。ビタミンCや食物繊維だけでなく、カリウム、葉酸…。特に日本人に不足しがちといわれている栄養素が凝縮されているのもうれしい事実。生のままで食べられるので、加熱による栄養素の流出も防ぐことができるのも大きな強み。

キウイの栄養素充足率はナンバーワン

 

▽平均年齢は63歳

 私は、キウイの収穫期を迎えている4月中旬、キウイ栽培の現場を訪れた。

 NZ北島の北東部に広がるベイ・オブ・プレンティ(Bay of Plenty)地方は、同国のキウイ生産の約80%を占める最大生産地だ。

 その中心都市タウランガ(Tauranga)にある、この地域で最大級の広さを誇るトゥイン・カオリ(Twin Kauri)果樹園。経営者のショーン・カーナカンさんは1982年から、妻のジョーさん、息子のロッキーさんとともに家族で栽培を続けている。ゼスプリはキウイ生産者を「グローワー」と呼ぶ。ゼスプリにとってグローワーは単なるキウイの仕入れ先ではない。事業を共に作り、支え合うパートナーであり、同時にゼスプリの株主でもある。

 ここでは「ゴールド」の栽培用に25ヘクタール(ha)、「グリーン」が23ha、「レッド」は6haの土地を使っている。キウイの収穫シーズンは3月上旬から6月上旬で、この間、レッド、ゴールド、グリーンの順で収穫が進む。収穫のピーク時には、この果樹園では70人を超える作業員がピッキング(摘み取り)に従事する。サモア出身の男性が20人超と最多で、日本人も2人働いているという。

家族で果樹園を営むショーンさん一家

 

 日本では多くの農家が高齢化や後継者不足といった深刻な悩みを抱えているが、実はNZでも同様の問題はある。

 キウイ果樹園での平均年齢は63歳と高齢化は進んでいるという。ショーンさんは「後継者がいない農家では園地を売るしかない。ただ、うちは後を継いでくれる息子がいて幸運だった」と表情は明るい。ショーンさんの果樹園も、近隣で売りに出た園地を買い取り、栽培面積を拡大してきた。ゼスプリが展開するキウイの中には、サンゴールドやルビーレッドなど独自に開発された品種があり、こうした品種は知的財産として管理されているため、契約した生産者がライセンスのもとで栽培を行っている。 

 ショーンさんは「若者がゼロからキウイ農園を購入するのはコスト的に大変難しい」と話す。

キウイを守る防風林は高さ数メートルに及ぶ

 

▽国、地域、民間で次世代を育成 

 園地の売却は常にあるというが、それでも、キウイ栽培を取り巻く環境に悲愴感はない。ゼスプリがグローワーに安定的な利益を還元していることに加え、地元の高校ではキウイ栽培のテクニックを学ぶ授業が行われたり、果樹園へのインターンシップ制度も実施されたりしているという。

 日本の農家に比べると、NZでは国や地域ぐるみで「次世代育成」を意識し、その対策に積極的に取り組んでいる様子が明確に伝わってくる。また、ゼスプリの「生産者協同組織」というモデル自体が、一つの問題解決策(ロールモデル)へのヒントにつながるともいえないか。国、地域、民間相互の取り組みで、キウイ栽培を支えるための次世代へのバトンは確実に受け継がれているようだ。

果樹園を継ぐ息子のロッキー・カーナカンさん


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