レクチャーコンサート「しまの音」の会場(ヤマハホール)
技術で文化と社会に貢献
企業の原点を語るヤマハの研究開発統括部先進技術開発部・森隆志 副部長
注目すべきは、このプロジェクトにおけるヤマハの役割と姿勢である。ヤマハの先進技術開発部・森隆志 副部長と同部新価値グループ稲岡紋子氏の解説によれば、同社は単なる技術提供者としてではなく、地域文化の当事者とともに歩む「共創」のパートナーとして参画。その根底にあるのは、技術を通じて社会や文化の多様性に貢献するという強い信念だ。プロジェクトでは、ヤマハが長年培ってきた「モノ(楽器)」と「ヒト(感性)」の研究ノウハウが、三線の「現在地」を解き明かすために惜しみなく投入された。
具体的な研究内容は、驚くほど多角的かつ精緻だ。まず「材料」の研究では、枯渇する黒檀の代替を探るべく、振動試験や多角的な分析を実施。三線に使用されたことのない国産材や、西洋楽器で使われる木材までを視野に入れ、三線の音色の本質をつかさどる物理的特徴を可視化した。また、「楽器のふるまい」の調査では、職人が感覚で調整する「皮の張り加減」をレーザー計測によって数値化。長年「師匠の背中を見て学ぶ」とされてきた暗黙知を、科学という共通言語に変換することで、技能継承の新たなステップを提示した。さらに、演奏家と職人の間で使われる、感覚的で共有しづらい「音色の表現語」を収集・整理し、コミュニケーションツールとして体系化する試みも進められている。
ヤマハにとって、自社で製造していない楽器をこれほど深く研究することは前例のない挑戦であったという。しかし、西洋楽器の視点から三線を捉え直し、ギターやドラムといった他の楽器と比較することで、三線特有の「ふるまい」がより鮮明になった。この「知の結合」こそが、プロジェクトに数多くの発見をもたらした。伝統をただ「変えずに守る」のではなく、その本質を科学的に理解し、未来の形を共に模索する。その姿勢は、外に開かれた視点を持つ沖縄の人々の精神性とも深く共鳴している。
三線の研究について説明するヤマハの先進技術開発部新価値グループ稲岡紋子氏
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