世界的なピアニストで、指揮者の反田恭平さんが3月下旬の夜、東京・麻布台ヒルズのタワープラザにあるブランド・ストア「FREUDE by BMW」で、自身が特別にプログラムを組んだスペシャルコンサートを開いた。ビー・エム・ダブリューのプロジェクト「BMW BELIEVES」のキックオフ記念イベントとして開催した。
「トーク&演奏」という公演スタイルについては「これまでやってこなかった」という反田さんだったが、この夜だけは、ユーモアを交えながら各楽曲のエピソードなどを紹介するとともに、汗びっしょりになりながらピアノに向き合い、招待客らは大いに魅了された。


▼「“人生に、駆け抜ける歓びを”を増やす」
演奏を前にビー・エム・ダブリュー ジャパン ブランド・コミュニケーションマネジャーの井上朋子さんが、反田さんは約4年前から、BMWのブランドを広める〝フレンド〟として活動していることに触れた上で、「特別な演奏をしていただくことになり、とてもうれしく思っています」とあいさつした。
BMWはこれまで、マーケティング活動するにあたって世界共通で、①モータースポーツ②ゴルフ③クラシック音楽――の3つの分野に対しサポート活動を行ってきたことを紹介。今回、その支援活動をさらに発展させ、「“人生に、駆けぬける歓びを”増やしていく」をコンセプトとした、「BMW BELIEVES」プロジェクト開始を記念して、反田さんのコンサートが実現したという。
井上さんは、プロジェクトのクラシック音楽分野では「このブランド・ストアで今後、音楽家を招いて演奏イベントを5回開くことにしております。若手の音楽家の演奏の場をさらに拡充させたい」と意気込みを語った。
井上さんが反田さんに「これまでのBMWライフはいかがですか」と尋ねると、「いろいろなところで(BMWの)車に支えられています」と答えた。「少しリラックスしたいな、と感じたときに、海の近くにある好きなスポットに車を飛ばし、そこで夜風にあたると、ぐっすり眠れるようになります」と話すと、会場から笑いが起きた。
指揮者としても活躍する反田さんは「これまでピアノだけで済んでいたのですが、指揮者となると、オペラなども勉強しなければいけなくなりました。車の移動中には、次のコンサートの予習をしたり、ライブ終了後の録音された演奏を聴き直す復習をしたりしています。本当に生活の一部になっています」としみじみ語った。

この日のプログラムは、ムソルグスキー、リスト、ショパンの豪華なラインアップで、反田さんも「フランス料理で言えば、メインの料理ばかりを取りそろえました」と語り、会場の笑いを誘った。
1曲目はロシアの作曲家ムソルグスキーの「展覧会の絵」から、反田さんが「プロムナード」「キエフの大門」などを選曲。演奏に入る前、反田さんは「実は今日(3月21日)はムソルグスキーの誕生日なんです」と話し始めた。「展覧会の絵の演奏時間は35分ぐらいあるのですが、そこをぎゅっとまとめて10分ぐらいにしました。『プロムナード』については、友人であったハルトマンが亡くなった後、彼の展覧会が開催され、そこにムソルグスキーが足を運んだときの感情が表されています。悲しい絵を見たときの感情、楽しい絵を見たときの感情が込められ、(聞き手が)展覧会を一緒に巡っているかのような感じにさせてくれる、素晴らしい作品です」などと、各曲の背景を反田さん一流の解釈で、次々と説明した。
「キエフの大門」については「どこかのテレビ番組で聞いたことがあるフレーズが聞こえてくるかもしれません。とても珍しい場所、建築などを紹介する、あの番組の中で聞こえてきます」と紹介すると、多くの観客はうなずき、反田さんは静かにピアノに向かった。
2曲目は、リストの「伝説」より「水の上を歩くパオラの聖フランチェスコS.175 R.17」を披露した。コンサート前にインタビューに応じた反田さんに、「“人生に、駆け抜ける歓びを”増やすというキャッチフレーズから連想される曲は」と尋ねると、「今日演奏するリストも、イメージされる一つです」と教えてくれた。
反田さんは「リストのこの曲は、海や波がテーマになっている作品です。(映画の『十戒』にあったような)海が割れ、さっと道が現れてくるという伝説的な背景を基に作られた曲で、イメージは無限大。僕は普段、高速道路を走ったりしますが、浴びている風がたまらなく心地よく“人生に、駆け抜ける歓びを”増やすという言葉が連想されます」と選んだ理由を語ってくれた。
3、4曲目はショパンの「ラルゴ」「英雄ポロネーズ」。ご存じの方も多いだろうが、反田さんは2021年、第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで、日本人では半世紀ぶりの最高位となる第2位を受賞した。
最後の「英雄ポロネーズ」を弾き終わると、会場のあちこちから「ブラボー」のかけ声が響き、拍手が鳴りやまなかった。


▼「反田さんのこれまでの人生と重なる」
反田さんは、自身がプロデュースするジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)を指揮し、2~3月に全国10会場超のコンサートツアーを開催した。JNOは、ソリストとしても活躍する同世代の実力派のアーティストたちに反田さん自らが声をかけ、結成された。反田さん個人の活動としては今年、オーストリアのザルツブルク音楽祭で、史上初めての「弾き振り」(ピアノ演奏をしながら指揮をする)でザルツブルクモーツァルテウム管弦楽団との共演が決まっているという。
この日のコンサート前に取材に応じた、ビー・エム・ダブリューのブランド・コミュニケーションマネジャー井上朋子さんは反田さんについて「ブランド・フレンズとして約4年たちます。ジャパン・ナショナル・オーケストラのツアーへの協賛もさせていただいております。反田さんにかかわるコンテンツへの反応は大きく、BMWの購入成約率も高く(起用した)効果はとても感じています」と語った。
「反田さん自身のこれまでの人生、キャリアが、私たちの“人生に、駆け抜ける歓びを”増やすという言葉と重なっているようです」とも強調した。
JNOを率いる反田さんは「今、若手、後輩たちがすごく頑張っています。みんな、音楽に対する熱い心をもっている人たちばかりです。気に入ったアーティストがいましたら、ぜひ応援をしていただければと思います」と力を込めた。
