大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」https://www.daido-life.co.jp/knowledge/survey/を2015年10月から毎月実施している。2024年7月度の主なテーマは「企業を取り巻くリスクへの備え」。全国の7553社の中小企業経営者を対象に、7月1日から31日にかけて訪問またはZoom面談で調査を行った。その結果、想定しているリスクは「地震」が最多で、背景には南海トラフ地震への懸念が影響していることも予想される結果となった。
中小企業が事業継続に支障をきたすと想定するリスクを尋ねたところ(複数回答)、「地震」が62%で最多。以下、「風水雪害(台風・豪雨・洪水・雪害など)」が55%、「自然災害に起因しない事故(火災・停電・通信障害など)」が49%、「感染症の流行(新型コロナ・インフルエンザなど)」が44%だった。「地震」と回答した割合を都道府県別でみると、「静岡県」(80%)、「香川県」(77%)、「高知県」(75%)など、南海トラフ地震防災対策推進地域が総じて高いことが分かった。
「リスクへの備え」として今後取り組みたいこと(複数回答)は、「災害時の備蓄(食料・飲料水・救急用品・予備電源など)」が24%と最多。以下、「事業所の安全対策(耐震性・不燃化・浸水など)」(22%)、「緊急時のサポート・業務連携体制の構築(同業他社・地域間などで構築)」(19%)、「事務所・倉庫・車両など代替拠点・手段の確保」(18%)。自然災害への備えが多かった。
自然災害・大火災・テロ攻撃などの緊急事態に備える「BCP(事業継続計画)」 https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_c/bcpgl_01_1.htmlを「策定している」企業は12%と、前回調査(2023年7⽉、10%)から増加した。一方、65%の企業は「策定予定なし」と回答した。業種別に見ると、「医療・福祉業」では他業種に比べて「策定している」企業が多かった(46%)。BCP策定の際に想定しているリスクは、「地震」(56%)」や「風水雪害」(50%)など、自然災害へのリスクが多く、以下、「自然災害に起因しない事故(火災・停電・通信・障害など)」(42%)、「情報セキュリティ上のリスク(コンピューターウイルス感染・情報漏えいなど)」(39%)だった。
策定したBCPの具体的内容(複数回答)の上位3位は、「緊急連絡体制の整備」(56%)、「システム・データのバックアップ」(53%)、「災害時の備蓄(食料・飲料水・予備電源など)」(42%)だった。
また、所定の要件に基づいたBCPを作成し経済産業大臣の認定を受けると税制優遇などの支援策が活用できる「事業継続力強化計画」を知っているかどうかも尋ねた。「名称・内容ともに知っている」企業は23%にとどまった。
経営者たちからは、BCP策定に関し、「BCPを策定しないといけないとは思うが、かなり時間がかかるため、なかなか手を出せない」(不動産・物品賃貸業/北海道)、「会社の役員間で危機意識の差が異なり、意見がまとまらない。なぜ取り組むのか明確にし、すり合わせていきたい」(製造業/北海道)、「BCP策定にはより細かな自社分析が必要であることを改めて認識した。適切な対策を進める必要があることは十分に把握しているが、人員、予算等が不足しており、BCPの根本対策にまで行きつかない」(情報通信業/南関東)など、厳しい現状が寄せられた。
一方で、「年始の震災でBCPの必要性を実感したはずだが、世の中的に6カ月で風化してしまっているような気がする。しかし、重要性を痛感しているので自社では策定中」(建設業/北陸・甲信越)、「危機管理を全く考えていなかったため、自分の甘さに反省した。緊急体制から組み立てたい」(建設業/九州・沖縄)などと、地道に取り組み始めている企業も見られた。また、「『事業継続力強化計画』の存在を知らなかったので、勉強になった。自社で独自に策定しているBCPと比較検討したい」(その他/九州・沖縄)との声もあった。