今年になって新NISA(少額投資非課税制度)が始まるなど資産運用への関心が高まる中、マネックス証券が日体大のスポーツマネジメント学部で金融リテラシーに関する講義を実施、2回に分け計約260人の学生が参加した。講師を務めた同証券の岡元兵八郎チーフ外国株コンサルタントは「将来に備え、お金に働いて稼いでもらうことを考えてほしい」と訴えた。講義を企画した竹腰誠教授は「学生たちが話に引き込まれていた」と話した。
「正直言って、最初は私語も聞こえ学生の反応が分からなかった。でも後半は教室がシーンとなって興味を持ってくれた手応えがあった」。投資に関する講演をする機会が多い岡元さんだが、普段の聴衆は50歳以上がほとんど。この日は手探りの講義だったという。
序盤は自己紹介も兼ね1970年代に宮崎県で中学、高校生だったころの話を披露した。中学では英語が苦手だったが、短波ラジオで英語を勉強し高校時代にはカナダに留学。米テレビ局の東京支局でアルバイトをしていた大学生の時には、フィリピンのマルコス独裁政権下の1983年に起きた反体制派のアキノ氏暗殺事件の際にフィリピンに渡航した。これまでに80カ国以上を訪れたといった冒険色豊かな話を聞くうち、学生たちのマインドも自然と世界に開かれた。
経済や資産運用ついては、世界的に日本がどういった位置づけにあるのかを説明した。人口減少が日本の未来に及ぼすマイナス面や、かつては米国に次ぐ2位が定位置だった国内総生産(GDP)ランキングが、2050年には6位、75年には12位に低下するといった見通しを指摘。経済成長の源泉であるイノベーション力の指標と言える企業の研究開発費が、米国が年間45.9兆円なのに対し日本は5.8兆円にすぎないといった問題点も明らかにした。
身近な例として、アップル、グーグル、アマゾンといった企業の製品やサービスがいかに生活に欠かせないものになっているかを強調し、米国株の強みを説明。「若いときは頑張りがきくが、そのうち思うように仕事ができなくなる。その時のためにお金を増やしていくことを考えて」と呼びかけた。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の「ゆっくりお金持ちになることは簡単」との言葉を示し、長期的なスパンでこつこつと取り組む必要性に言及。岡元さん自身は、4年前から毎日1000円ずつを投資。その状況をネットで公開しており、現時点で233万円の元本が365万円に増えているとの数字が映し出されると、驚いたように見つめる学生もいた。
質疑応答の際には、ある学生から「結局どこに投資すればいいのか」というストレートな質問も。岡元さんは「日本人として日本株にという考えもあるが、一部だけでも米国株に投資すべきと思う」と持論を述べた。3年生の澤田昴志郎さんは「株式投資には企業を応援するという側面と、利益を得るという側面があるが、お金を増やすということなら米国株がいいのかなと思った」と話した。竹腰教授は「スポーツマネジメントをする上で、金融の勉強は不可欠ということで講義を企画したが、思ったより金融に詳しい学生がいてびっくりした」と、意外に高い学生のマネーリテラシーに感心していた。