2024年春闘では、多くの大手企業が労働組合の要求に「満額回答」するなど、デフレ脱却に向けた動きが本格化している。一方、すべての労働者の約4割を占める、派遣労働者・有期雇用労働者の処遇改善は急務となっている。
こうした状況の中、請負・派遣事業の適正で健全な運営と、労働者の雇用安定、処遇の向上を目指し、人材サービス事業を展開する企業で構成される「一般社団法人日本BPO協会」(会長・清水竜一NISSOホールディングス社長)と連合(芳野友子会長)は3月12日、派遣・請負労働者の賃上げに向け協力するといった内容の共同宣言を東京都内で締結した。連合との共同宣言は昨年に続き、今年で7回目。
▽すべての働く人を視野に
この日締結された共同宣言は、少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少が進む中、「すべての労働者の処遇改善など、安全・安心で、多様な働き方を実現する就業環境の整備と人への投資の重要性は一層増している」と指摘。その上で「派遣労働者や請負現場で働く有期雇用労働者を含め、すべての働く人を視野に入れた社会全体での持続的な賃上げを実現しなければならない」と指摘した。
賃上げを実現するためには、製造業の人件費などを指す「労務費」について、「価格転嫁が確実に行われ、賃上げに向けた適正な原資が確保されるよう、共に協力していかなければならない」と強調。労務費の上昇分について、発注側の企業が前向きに応じることが、労働者の賃金アップにつながるとした。
会合の冒頭、連合の清水秀行事務局長は「2024年春闘は、昨年を上回る賃上げを何としても勝ち取り、賃金も物価も安定的に上昇する経済社会のステージに転換する正念場だ」とあいさつ。「労働組合員だけではなく、労働組合のない職場で働く、多くの仲間を含めた社会全体で、賃上げ、労働条件の改善が大事である」との考えを示した。
▽人材確保が大きな問題
日本BPO協会の清水会長は「国内はここ数年、半導体やリチウムイオン電池など大型プロジェクトがめじろ押しとなっている。一方、人材確保が大きな問題となっており、市場価値の高い人材を育成し、お客さまにお届けすることが、大変重要だと認識している」と話した。その上で、協会としては「働く方々が、将来に向けてスキルアップしながら、夢のある、幸福感を味わえるような働き方ができるよう尽力したい。連合のみなさまのいろいろな知見をいただきたい」と述べた。
この日の共同宣言では、「ビジネスと人権」についても触れた。それによると、「企業は、雇用状態にかかわらず事業活動に関わるすべての労働者の人権を尊重しなければならない。労働関係法令の遵守はもちろんのこと、労働者との対話を通じ、より働きやすい職場作りに取り組むことが求められる」と、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の区別なく、すべての働く人々の人権が尊重されるべきだとの認識を示した。
会合後、取材に応じた清水会長は、連合と共同宣言を結んだことについて「派遣労働者・有期雇用労働者の方々が、ここ数年の賃上げトレンドから置き去りにされるわけにはいかないという強い気持ちがあった」と語った。
また、宣言にある「ビジネスと人権」について清水会長は「メーカーなどで一人の労働者として、派遣先でしっかりと認められ、働いていくことはとても大切なことだ。ナショナルセンターである連合と一緒に、さまざまな課題に取り組むという意思表示をさせていただいた」と強調した。