地球環境問題の解決に関して科学技術面で大きく貢献した研究者らを顕彰する「2023年(第32回)ブループラネット賞(地球環境国際賞)」(旭硝子財団・東京)の受賞者会見が10月3日、東京都内で開催された。
毎年、原則として2件を選定するブループラネット賞。受賞者には賞状、トロフィーと賞金50万米ドルが贈呈される。今年度は41カ国182件の受賞候補者が推薦された。6月に発表された受賞者の一組は、リチャード・トンプソン教授(英プリマス大)、ペネロープ・リンデキュー教授(英プリマス海洋研究所)、タマラ・ギャロウェイ教授(英エセクター大)の3人のイギリスの科学者グループ。もう一組は、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学のデバラティ・グハ=サピール教授。
会見にはタマラ・ギャロウェイ教授を除く3人が登壇した。
トンプソン教授ら科学者グループは、海洋中のマイクロプラスチックの発見と、深海から高山にまでに及ぶ分布を可視化。さらに海洋生物がマイクロプラスチックを摂取していることを明らかにし、生態系プロセスへの影響に関する理解が大きく進展した。さらに、席的な法制定など海洋のプラスチック汚染の問題の解決策を講じるよう国際社会に対して求めたことが高く評価された。トンプソン教授とリンデキュー教授は、マイクロプラスチック問題の解決について、「サイエンスデータに基づいた産業や社会の連携」や「グローバルスケールでアクションを起こすこと」の重要さを指摘した。
サピール教授は、嵐などの巨大災害、地震などの地球物理学的災害、パンデミックなどの生物学的災害、紛争などの世界の大規模災害に関する初の災害データベースを作成・開発。この研究成果が多くの国際機関、各国政府・研究機関などで気候変動緩和策・適応策や防災・減災のために活用されていることなどが高く評価された。サピール教授は「私は異常気象が人類にどのように影響を与えるのかを研究し、世界の全ての災害のデータをまとめたデータベースを30年前に作った。この受賞をきっかけに衛星データを利用して、自然災害を予測することを次のフェーズとして進めたい」と意気込みを語った。
旭硝子財団では今年度総計305件、4億8780万円の研究助成と、これまでに約35億円の奨学金を支給した奨学事業を行っている。