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醸造・発酵技術でつくられるビール、焼酎、日本酒(左から)

「伝統的酒造り」に研究と教育で貢献 東京農大が世田谷キャンパスで醸造・発酵交流会

 日本酒や本格焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」が2024年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたのを受け、東京農業大は1月23日、世田谷キャンパスで醸造・発酵交流会を開催した。卒業生や酒造会社の担当者、報道関係者らが出席。各地から寄せられた25種類の日本酒を試飲しながら、酒だけでなくみそやしょうゆ造りにも欠かせない醸造・発酵技術の進展や大学の役割などについて意見交換した。

発泡する日本酒を楽しむ参加者
 

 東京農大は70年以上の歴史がある醸造科学科を擁し、研究や教育を通して酒造りの継承と発展に貢献している。交流会の冒頭、江口文陽学長は「発酵技術、微生物の技術を使い、いろいろなものを醸すのが日本の食の在り方。本学に醸造をずっとやってきた学科があることを覚えていただきたい」とあいさつ。日本酒の蔵元の約60%に東京農大卒業生がいると述べ「研究や教育が多くの学生を輩出し、社会実装できることが極めて重要と考える」と強調した。

江口文陽学長
 

 続いて醸造科学科酒類生産科学研究室の徳岡昌文教授が「酒造り工程と“国菌”麹(こうじ)菌について」と題し、日本酒が手間をかけて丁寧につくられていることを分かりやすく解説。「最近は地球温暖化の影響で、できた米のデンプンが溶けずブドウ糖に分解されにくくなっているのが、酒蔵の大きな問題になっている。われわれの研究室では、こうじ菌の酵素の活性を高めることで溶けるのを促進することに成功した」と最新の研究成果の一端も紹介した。

徳岡昌文教授
 

 乾杯の音頭を取った石鎚酒造(愛媛県西条市)社長の越智浩さんは卒業生。「先人が培った技術を継承しながら新しい感性、技術を加えて、酒造りの革命をしたい。日本酒の未来は明るい。東京農大は人材を育て、私どもの業界に配置してほしい」と要望した。また「日本酒のオピニオンリーダーは若い人や女性だと思う。ソーダ割りは新しい飲み方になるだろう。いい飲み方があれば固定観念にとらわれずに飲めばいい」と、自由な発想で日本酒を楽しむことを提唱した。

越智浩さんの音頭で乾杯する参加者
 

 会場には日本酒のほか焼酎やビールも並べられた。特に注目を集めたのは、上皇后美智子さまが皇太子妃時代に英国から贈られたバラ「プリンセスミチコ」から分離した花酵母を使ってつくられた日本酒11種類。甘く華やいだ香りは共通しているが、味は酒蔵によって微妙に違う。参加者は杜氏(とうじ)の苦労をしのびながら飲み比べ「柔らかくまろやか」「爽やかな酸味が印象的」など、好みや感想を語り合っていた。

花酵母「プリンセスミチコ」でつくられた日本酒
 

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