
災害が起きる前から、官民で一緒に備える――。自治体が企業などと交わす防災協定を紙の上の約束に終わらせず、平時から動かす取り組みが各地で始まっていることが9日、株式会社共同通信社の全国調査で分かった。
協定の内容は、水や食料の提供から、地域の弱点を一緒に洗い出す取り組みまで幅広い。全国調査では、回答した817自治体のうち384が連携事業として物資供給協定を挙げる一方、協定を結んでいても連携実績はないとの回答もあり、名ばかりの協定としないための工夫が課題になっている。
▽協定から行動へ
防災分野の官民連携をめぐる課題のうち、最も多かったのは226自治体が挙げた「職員の防災人材不足」だ。京都府のある自治体は「民間企業や関係団体等との防災協定を締結しているが、連携事業としての取り組みはない」と回答している。そこで、協定締結から実効性のある取り組みに踏み出そうと、自治体の枠を越えて備えを活発化する動きがある。
2024年の能登半島地震では、主要道路の寸断によって多くの集落が孤立した。同じ半島という共通の地形条件を抱える神奈川県の三浦、横須賀、鎌倉、逗子の4市と葉山町は、その教訓を自らの地域の課題と受け止めた。
4市1町は25年4月に首長連合会議を設置し、翌5月、NTT東日本と防災連携協定を結んだ。同年6月以降、各市町の災害対応力や情報連携を105項目で診断し、調査結果を基に備蓄、避難、ライフライン強じん化など5つの重点テーマを定めた。テーマごとに各自治体が部会長を担って課題を洗い出し、どの自治体がどのテーマを担うかを決め、書面の約束を実際の行動へ落とし込む取り組みに挑んだ。
▽村の備えを全国の物流網で
協定相手の企業が持つ機能を、地域の備えに組み込む例もある。長野県木祖村は2025年4月、NPO法人「コメリ災害対策センター」(新潟市)と災害時の物資供給協定を結んだ。
奥原秀一村長は04年の新潟県中越地震で被災地を訪れ、必要な物資を過不足なくそろえる難しさを目の当たりにしたという。村だけで備蓄を積み増すのではなく、ホームセンターの調達力と在庫管理の経験を活用する道を選んだ。
村が頼るのは、全国の物流網だ。同センターが自治体などと結んだ災害協定は、木祖村を含め1241件(26年7月時点)に上る。携帯トイレや飲料水、LEDライト、ブルーシートなどを行政の要請に応じて供給する。防災訓練では用品の展示も行い、平時から村と接点を持つ。物資の調達先と連絡手順を確かめ、災害時に動ける関係を日頃からつくっている。
▽買い物の場で協定を動かす

住民を巻き込んで協定を動かす自治体もある。埼玉県新座市は、ホームセンター大手のカインズ(埼玉県本庄市)との間で、物資供給や店舗駐車場の一部を車で避難する住民の一時駐車場所とする協定を結んだ。その関係を平時の活動へ広げようと、2023年度からカインズ新座店で「新座市防災フェア」を開き、日常の買い物の場を住民が防災に触れる機会へ変えている。
店内の防災用品を巡るスタンプラリーや、消防、自衛隊、電力・ガス会社による展示、消火器や起震車の体験などを組み合わせ、24年度には約3000人が来場した。市は同種の取り組みを25年度も続けている。
災害時に物資や場所を提供する企業が、平時から住民の防災意識を育てる。有事の協定を日常の店舗運営と結び付けることで、企業、行政、住民が平時から互いの役割を確認する場になっている。
調査は47都道府県と1741市区町村の計1788自治体を対象に実施し、45.7%の817自治体が回答している。(株式会社共同通信社 垂見和磨)
![b.[ビードット]](https://d26qpuj9rvgv8w.cloudfront.net/wp-content/uploads/2018/04/Logo-5.png)
