2年ほど前、ある林業産地で地元の製材所の社長が木質バイオマス発電向けの燃料材のストックヤードに連れて行ってくれたことがある。そこには大量の丸太が積み上げられていて、中には製材品や合板の製造に使えそうな丸太も含まれていた。
「こういう丸太もいきなり燃やしてしまうというんです。できればウチで引き取りたいんですが、手が出せない」と、その社長は悔しそうに語った。
東日本大震災での福島第1原子力発電所の事故をきっかけに再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が導入された。太陽光や風力、そして木材などを利用して発電した電力は、FITに基づき政策的に設定された優遇価格で電力会社に買い取ってもらえる。
それを当て込んで各地にメガソーラーや大規模風力発電施設が出現したのは周知の通り。そして木材を燃やして発電する木質バイオマス発電所も全国で設置が進み、林野庁の資料によると2024年3月末時点で244カ所が稼働している。
それらの発電所が燃やしている燃料材は毎年増加し、2024年実績で年間2259万立方メートルにも及ぶ。これは同年の製材用材の需要(2231万立方メートル)をわずかだが上回る。床面積40坪の木造住宅を建てるのに使われる木材は丸太換算で50立方メートル程度になるから、木造住宅約45万軒分の木材が発電用に燃やされているわけだ。
もちろん、どんな丸太でも燃やしていいわけではなく、FITで優遇価格が適用されるのは、間伐材や伐採現場に放置される未利用材であることが基本だ(製材端材や建築解体材も対象)。ところが、国が定める森林経営計画の認定を受けた森林で生産されたものなら未利用材として扱われるため、製材品や合板の製造に使えそうな丸太でも発電用に燃やされている実態がある。

電気の買取価格がFITで保証されているため、燃料材の価格は安定している。ただ燃やすだけなら、製材用材や合板用材のような品質に応じた仕分けは不要で面倒がない。十把ひとからげに燃料材として取引されてしまうから、製材業者も手が出せないという事態が起きる。
木材は建築や家具に使われた後、各種木質ボードや紙の原料としてリサイクルできる。品質的に燃料にするしかないものならともかく、普通に利用できるものなら、燃料にするのは最終段階とするべきだ。そういう木材利用こそ、サステナブルな社会の実現に寄与するはずだ。
赤堀楠雄(あかほり・くすお)/ 林材ライター。1963年生まれ、長野県在住。林材新聞社(東京)勤務を経て99年に独立。森林・林業・木材・木造住宅などに関する取材、執筆を行う。著書に「林ヲ営ム〜木の価値を高める技術と経営〜」(農文協)など。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.7からの転載】
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