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標高1333メートルの山頂から初日の出を拝んだ

新規スタートの年に  赤堀楠雄 材木ライター  連載「グリーン&ブルー」

 私の住む集落では、元日の早朝から集落内の山に登り、頂上から初日の出を拝む「元旦登山」という地元公民館主催の恒例行事がある。私は役員を務めているので、今年は主催者として参加してきた。

 「集落内の山」といっても標高は1333メートルもあり、登山口から山頂までは大人の足で2時間はかかる。日の出は午前7時ごろなので、今年は3時半に集合し、4時ごろから登山に取りかかった。当然真っ暗な中なので、それぞれがヘッドライトや懐中電灯で足元を照らしながらの道行きである。

 大晦日(おおみそか)の夕方まで小雨が降っていた天気は一変し、雲一つない夜空には文字通り満天の星が輝いている。標高が上がるに従い、家屋がまばらな集落から離れた下界を見下ろせるようになり、都会ほどではないが、街の明かりが散りばめられた夜景が美しい。

 今年は積雪が途中までは足首ほど、稜線(りょうせん)に出てから山頂までは膝くらいとそれなりにあり、何度かの急傾斜にも難儀はしたが、6時ごろに無事全員が登頂を果たした。年末の準備登山で用意しておいたまきを焚(た)き、暖を取りながら快晴のもとで初日を拝んだ。

 持参した野菜や餅でつくった雑煮を味わい、簡単な酒肴(しゅこう)も楽しみながら、集落の仲間とたわいない話で盛り上がる時間は登山の苦労を忘れさせ、格別なものがあった。

 ただ、残念だったのは参加者が9名と少なかったことだ。

 実はこの行事は、集落の子どもたちの育成を目的としていて、以前はかなりの数の子どもが参加していた。しかし、今年は子どもの参加はゼロで大人ばかり。しかも役員4名を除いた一般参加は5名と寂しいものであった。

 人口減が続く中、この元旦登山に限らず、各種行事への参加者は年々減少傾向で、行事自体も縮小したり、廃止を検討したりと、後ろ向きの対応になってしまっている。何か新しいことをと提案しても、それが将来継続できるのかと問われれば、前向きには答えられず唇をかむことになる。

 しかし、何もやらずに時を過ごすままでは停滞感が増すばかりだ。長く継続できれば越したことはないが、それができるかどうかは置いておき、今を楽しむための取り組みを今年はいくつか始めようともくろんでいる。移住から15年も経つと、気心が知れ力になってくれそうな仲間もいるので心強い。

 巳(み)年にあやかり、新規スタートの年にしたい。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.3からの転載】


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