連休が目の前に迫ってまいりました。コロナ感染流行も落ち着き、制限緩和が進む中でのゴールデンウイークですね。久しぶりに、心置きなく温泉旅行が楽しめる状況ではないでしょうか。
私ももちろん、温泉巡りをする計画を立てています。
温泉の魅力はたくさんありますが、私は「お湯そのもの」の個性を感じたい、という視点で温泉を選んでいます。そのためには、「温泉の鮮度」が大切。いわゆる「源泉掛け流し」の温泉がそれに当たることが多いです。今回はそんな「鮮度重視」でお湯を提供してくれる温泉宿の一つ、新潟県の「赤倉温泉 遠間(とおま)旅館」をご紹介します。
新潟県妙高市の高原に湧く赤倉温泉。200年以上前の江戸時代からの歴史があり、明治以降はスキーリゾートとして栄えた温泉地です。温泉街はどことなくヨーロピアンな雰囲気で、冬季はスキーやスノーボードの客でにぎわいます。
遠間旅館は、そんな温泉街のメインストリートにたたずむ5階建ての近代的な高層旅館。しっかりと和の風情を取り入れた外観です。こちらは、全国に2万5千人以上の認定者数を誇る人気資格「温泉ソムリエ」の家元(創設者)が営むお宿でもあります。私自身も「温泉ソムリエ」の資格を持っておりますが、私たちからすると「聖地」のような場所でもあります。
大浴場は男女別の内湯のみ。遠間旅館では、湯船に提供する源泉の「鮮度」を保つため、あえて露天風呂は作らない、というポリシーをお持ちです。源泉を加水・加温・循環・消毒なしの「掛け流し」で提供し、最高のコンディションで温泉を楽しむことができます。
泉質は、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉。無色透明のお湯の中には、ヒラヒラと白い湯の花が漂います。湯口付近は、ほのかに甘い「硫黄の香り」を感じる抜群のフレッシュさ。湯口からお湯をすくい、飲んでみると、甘うま塩ダシ味にほんのり焦げた風味が後から追いかけてくる複雑で繊細な味わいです。いかにもミネラルたっぷりで、フランス産のミネラルウオーター「コントレックス」のような飲み応えがあります(飲泉は自己責任です)。ツルスベ感とキシキシ感の同居する肌触りからも成分の濃さを実感。しばらく漬っていると、身体にプルプルとまとわりついてくるような感触が心地よく、幸せなひとときを過ごせます。
湯上りは、そのプルプルが肌に乗り移ったかのようなしっとり感。化粧水いらずの湯ともいわれるほどの美肌力を備えています。
そんなフレッシュな温泉を楽しめる湯船の中で、一番の「鮮度が良い」ところが「湯口」です。湯口とは、お湯が出るポイントのこと。この部分は温泉の個性を最も感じられるため、私は大好きです。また、温泉の成分が付着したり、ライオンやクマの形をしていたりと、「湯口」そのものにもさまざまな魅力があり、それを鑑賞することもおすすめの楽しみ方です。
遠間旅館では、女性用浴室の「湯口」が素敵。ヨーロピアンな顔立ちの少年のオブジェが鎮座しています。遠く一点を見つめて析出にまたがる彼は、希望に満ちあふれた表情をしていますね。こんな芸術的な湯口を見上げながら湯浴みをすれば、より深い癒やしを得ることができるのでは、と心の底から感じます。
温泉ソムリエ家元の経営する「遠間旅館」。全9部屋とアットホームな雰囲気で、宿の皆さんの温かさを身近に感じるお宿です。また、鮮度の良い温泉とともに、ぜひ「湯口」の魅力を感じていただけると、うれしいな、と思います。
【赤倉温泉 遠間旅館】
住所 新潟県妙高市赤倉34-2
電話番号 0255-87-2028
【泉質】
カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉(低張性 中性 高温泉)/泉温50.2度/pH:6.6/湧出状況:自然湧出/湧出量:不明/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆完全掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,400以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。