公益財団法人笹川平和財団(東京都港区、角南篤理事長)とグリーンランド自治政府は11月14日、北極地域の平和構築と持続可能な発展に向けて協力する覚書を締結した。
覚書によると、自治政府が新設した拠点「Eqqissinnermut Suliniarfik(ピースセンター)」を活用し、北極地域における紛争解決、先住民の参画拡大、気候変動への対応など幅広い課題に共同で取り組む。
締結式はグリーンランドの首都ヌークで行われ、角南理事長とヴィヴィアン・モッツフェルト外務・研究大臣が署名した。

ピースセンターは研究や教育、対話、交流などの分野で連携を進める拠点として位置づけられている。今回の合意を踏まえ、両者は同センターを基盤に多角的で継続的な協力を進める。
覚書に盛り込まれた主な協力内容は三点。
(1)北極での教育・研究や先住民の包括的な参加を促し、平和、気候変動、持続可能な発展について啓発活動を進める。
(2)日本とグリーンランドを含む関係者による学術・政策対話を促進する。
(3)フェローシップ・プログラム、研修、人事交流を通じて次世代の人材を育成する。
▼北極協力の歩みと「ピースセンター構想」
今回の覚書締結は、長年にわたる北極地域での取り組みが実を結んだものだ。
笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)の前身である海洋政策研究財団(一般財団法人シップ・アンド・オーシャン財団)は、1990年代から北極の課題に取り組んできた。
地政学的緊張が高まる一方、環境変化が急速に進む北極地域では、関係国間の対話や科学データ共有など研究協力の継続が不可欠とされる。笹川平和財団は民間研究機関として北極海航路をはじめとする調査研究を行い、日本の北極政策推進にも寄与してきた。
今回の協力は、グリーンランド自治政府が提唱した「ピースセンター構想」を具体化するもので、この構想は上川陽子前外務大臣がグリーンランド訪問時に自治政府との会談で議論されたことを契機に進んだ。覚書締結は、こうした経緯を踏まえた重要な前進となる。
▼角南理事長「先住民の知恵で共存図り、世界への発信拠点に」
角南理事長は、グリーンランドが気候変動の影響を強く受ける北極地域の中でも地政学的に重要な地域であると指摘。日本が北極評議会オブザーバー国として科学研究を中心に貢献してきたことに触れた上で、「今回の覚書締結は、地域に暮らす人々とともに、先住民の知恵を尊重しながら共存を図り、次世代の人材を育成し、平和構築や持続可能な発展を促進するための重要な一歩」と述べた。
さらに「ピースセンターを拠点に、グリーンランドの人々が自らの考えを世界に発信し、国際社会との対話を深めることを支援したい」と語り、北極地域研究の実績と現地での信頼を背景に、民間財団として協力要請に応える意義を強調した。

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