日本に古くからあるにごり酢のおいしさと健康食としての利点をアピールしていこうと、「いいにごり」にちなんだ11月25日が「いいにごり酢の日」の記念日に制定された。11月20日に東京都港区で記者会見した制定主体キユーピーの免疫・認知プロジェクト次長の奥山洋平さんは「酢酸菌を深掘りするといろんなことが見えてくる」と魅力を強調。奥山次長と共に「酢酸菌ライフ」という活動を続けてきた福岡県大川市の老舗酢蔵「庄分酢」の15代目で常務取締役の高橋清太朗さんは「酢は人類が最初につくった調味料。いいことがあるからこそ、ずっと使われてきた」と話した。
▽復刻の味
酢は米を原料とし、2段階の発酵を経て製造される。まずはアルコール発酵で酒ができる。続いて酢酸菌を投入し酢酸発酵によって原酢ができ、熟成することで酢ができる。その後、商品化の過程でろ過され、商店などでみられる透明の酢になる。実は、このろ過の際に、にごりの正体である酢酸菌が取り除かれるのだという。
江戸時代からある庄分酢の高橋さんは「蔵の職人は『(熟成の)かめから出した直後が一番おいしい』と言っている。見栄えや品質の安定性から酢酸菌を取り除いているけど、濁っているのが本来の味」と、江戸時代の味を復刻。マヨネーズの原料の一つである酢と酢酸菌を研究していたキユーピーの奥山さんと、酢酸菌を食べる文化を定着させようと「酢酸ライフ」を約5年前に開始。各地の酢蔵などが参画している。
▽酢グルメで健康に
記者会見では、時代小説家で江戸料理文化研究家の車浮代(くるま・うきよ)さんが、酢の歴史を説明。天下太平の江戸期に、それまでの「生きるための食」から「楽しむための食」という食文化の革命が起きたという。同時に、もともとは高級品だった酢が徐々に大衆化していった。そうして広まった“酢グルメ”の中でも代表格といえるのが「すし」だ。車さんは「酢にはネタの劣化を防ぎつつ、ネタとシャリの味を高める効果がある」と話した。
イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは、免疫や腸活を促進し、アレルギー対策にもなるといった酢酸菌の効能について語った。食物の発酵菌としては、ほかに乳酸菌や納豆菌が知られるが、酢酸菌はそれらとは別カテゴリーに属するという。「しかも酢酸菌はほかの発酵菌では押せない免疫スイッチを押すことができ、ほかの菌と同時摂取することで相乗効果もある」と力説した。
料理家・発酵マイスターの榎本美沙さんは、「うま酸っぱいグルメ」として、「フムスと魚介のタルタル にごり酢マヨネーズ」「納豆と魚介を乗せた江戸玉川屋うどん」「本鮪の握り寿司」の3品のポイントを解説。酸味の中に、にごり酢特有のうまみが感じられる味に舌鼓を打った。