梅雨も明け、本格的な夏がやってきました。猛暑というより、酷暑と感じる今日この頃ですが、いくら暑くても、この季節は海に行きたくなる方も多いのではないでしょうか。海遊びの後は、温泉でその疲れを癒やし、おいしい海産物でお腹も満たせれば、なお良しですね。
今回は、砂浜の目の前に建つ温泉宿、愛知県の「坂井温泉 湯本館」をご紹介します。
愛知県常滑市に湧く坂井温泉。知多半島の真ん中あたりに位置し、車だと中部国際空港(セントレア)から30分ほど、名古屋駅からは1時間弱のアクセスです。現在は、今回ご紹介する「湯本館」のみ残る小さな温泉地ですが、宿から道路を挟んですぐのところに坂井海水浴場があり、海水浴はもちろん、サップ(SUP、スタンドアップパドルボード)や潮干狩り(今年は中止)を楽しむことができます。
そんなロケーションの湯本館は、クリーム色を基調としたモダンなマンションのような外観。少し年季の入ったレトロな建物ですが、館内は清潔に保たれ、客室すべてがオーシャンビューというのが魅力です。
お風呂は、建物の最上階(5階)に設置された内湯のみ。内湯とはいえ、大きな窓からは、広大な伊勢湾と、中部空港に離発着する飛行機が望める絶景です。知多半島の西側のため、夕方はサンセットビーチを眺めながら湯浴みを楽しむこともできます。
湯船は2つあり、片方が白湯(水を沸かしたもの)で、もう一つが名物の温泉です。温泉は、トマトジュースのように濃厚な赤茶色で、眼前に広がるオーシャンビューにも負けない景色。温泉が少ない常滑市にありながら、愛知県内でも大変貴重な個性を持ったお湯です。そして、その湯を注ぐ「湯口」も強烈なインパクト。ギリシャ彫刻風の濃厚特大ソース顔オブジェの口から、源泉を湯船にドバドバと供給しています。なんとも神秘的で荘厳な雰囲気に圧倒されてしまいそうです。私にとっては、サンセットビーチの景色よりも、この色鮮やかな温泉と、ギリシャ彫刻風の湯口が織りなす風景がとてもグラフィカルで、絶景に感じました。ちなみに、こちらの湯口は、地元の焼き物師の方による「常滑焼」の作品なのだそうです。
温泉の泉質は、含鉄(Ⅱ)-ナトリウム・カルシウム―塩化物冷鉱泉。源泉温度が18度と冷たいため、加温循環の利用形態ですが、前述の通り、トマトジュースをほうふつとさせる赤茶色の濁り湯は、目にも鮮やかです。そんな濃厚そうに見えるお湯ですが、香りはほのかに鉄っぽさを感じる程度で、ほとんど無臭。入浴すると、ほんのりツルスベした肌触りで、割とあっさりとした印象でした。
海沿いのお宿ということで、食事は海鮮尽くしです。この日の夕食は、海鮮料理、ガシ(カサゴ)・タイ・カツオ・イカのお造り、メバルの煮付け、エビ焼き、エビフライなど、とてもボリューミー。特に、地元で水揚げされたガシを、丸ごと一匹さばいたお造りは絶品。どのメニューも宿の女将(おかみ)さん手作りで、とてもおいしく、お腹も心も満たされる思いでした。
夏の海には、酷暑を吹き飛ばすくらいの爽快な魅力がありますね。そんな海で遊んだ後に、温泉と海鮮尽くしの食事を堪能すれは、癒やし効果も抜群です。今年も夏本番。海と温泉に出かけて、夏の思い出を増やしたいですね。
【坂井温泉 湯本館】
住所 愛知県常滑市坂井西側1
電話番号 0569-37-0006
【泉質】
含鉄(Ⅱ)-ナトリウム・カルシウム―塩化物冷鉱泉(等張性 中性 冷鉱泉)/泉温18.9度/pH:不明/湧出状況:不明/湧出量:不明/加水:なし/加温:あり/循環:あり/消毒:なし
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)