岐阜大(岐阜市)の土田浩治応用生物科学部教授らの研究グループはこのほど、182万年前にヒメギフチョウ、90万年前にギフチョウがそれぞれ遺伝的多様性を拡大させたことを明らかにした研究結果をまとめ、生物地理学の国際誌「Journal of Biogeography」(オンライン版)で発表した。
研究は、全国のギフチョウ愛好家の協力を得て、ヒメギフチョウとギフチョウのDNA(デオキシリボ核酸)を使い、遺伝的多様性を分析した。その結果、ヒメギフチョウは182万年前、ギフチョウは90万年前にそれぞれ種内の遺伝的多様性を拡大させたことが分かったという。
特にギフチョウは少なくとも三つの地理的な方向に分化し、中国地方や関東地方への拡大が特徴的であることが分かった、という。また関東地方の遺伝的組成は他の個体群とはかなり異なっており、貴重な遺伝資源であることも明らかになったという。これらの分化は、ギフチョウが寄生する寄主植物「カンアオイ類」に対する適応という過程を経たものと考えられ、寄主植物が先に分化し、ギフチョウが新しい寄主植物への転換により多様化したとする 1970年代提唱の仮説を裏付けるものであるという。
日本固有種のギフチョウの名称は岐阜に由来。多くのチョウ愛好家を魅了してきた。研究グループは「植食性昆虫が寄主植物の分化の後、それに適応する形で進化することを日本列島という地理的なスケールで解明した研究であり、植物と昆虫との相互作用が形質進化や種分化に重要な役割を果たしていることを示す重要な発見」としている。