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NASは、家庭でも必需品の時代に

 NAS、すっかり一般的になりましたよね。とはいえ、初めて聞いたという方も多いと思いますので、おさらいから始めましょう。

 NASは「ネットワーク・アタッチト・ストレージ」の略語で、職場や家庭のLANに接続する補助記憶装置です。補助記憶装置と言ってもHDD(ハード・ディスク・ドライブ)、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、フラッシュメモリーなどいろいろありますが、NASの場合は大容量であることが一つのアイデンティティーなので、中身はHDDが主流です。価格がこなれてくれば、SSDも一般化するでしょう。

 HDDならパソコンに直接つなげればいいじゃないかと思われるかもしれません。本当にその通りです。パソコン内部に増設するにしろ、USBなどを通じて外付けにするにしろ、パソコンに直接接続するタイプのHDDの方が、価格も低廉で速度性能も優秀です。自宅に1台しかパソコンがないのであれば、NASを買ってくる理由はあまりないかもしれません。

 しかし、今は多かれ少なかれ、複数の端末を活用している人が多いと思います。スマホ、タブレット、サブノート、ネットフリックスやアマゾンプライムを視聴するためのSTB(セット・トップ・ボックス)、家族の学習端末などです。

 週末に見ようと思っていた映画のmp4ファイルを、デスクトップパソコンのHDDに入れてしまった。デスクトップパソコンはリビングに置いてあるから移動するのが面倒だ。そういう状況に陥ることはままあります。

 そうであっても、デスクトップパソコン内のファイルを共有すれば、手元のスマホやタブレット、テレビからも見ることができますが、起動に時間がかかるので電源を入れる気がしませんし、事前設定にも手間がかかります。

 そんなときに役に立つのがNASです。ネットワークに直接接続されていて、24時間動かし続けるのが前提のHDDですから、思いついたときに(そのネットワーク内からであれば)いつでもどこでも、映画や音楽、ドキュメントなどにアクセスすることが可能です。もちろん、パソコンからでも、スマホからでもこれらのコンテンツを楽しめます。

 また、提供する機能が「データの保存」に特化しているので、陳腐化しにくい点も特徴と言えます。スマホやタブレットはどんどん新しい機能が足されていくので、2~3年使ったら買い換えることになるかもしれません。そのとき、すべてのデータがスマホに保存されていると、新機種に移し替えるのはなかなか大変です。

 データがNASに保存されていれば、機器を新しくしても変わらず同じデータに、新機種からアクセスできます。もちろんNASだっていつかは買い換え時期が来るわけですが、どんどん新機能が登場するような機器ではないので一般的にスマホやノートパソコンより長く使えて、移行の手間が省けます。

 「データの保存」に特化した機器ですから、モノによっては(高いですが)RAID 1といって、HDDを2台搭載していて、両方に同じデータを書き込んで記憶しておく製品もあります。無駄なようですが、どちらかのHDDが故障しても、全く同じデータが入ったもう一台があるので、大事なファイルを失わずにすみます。

 会社や自宅にネットワーク環境が整備されていて、複数の端末を利用している状況であれば、とても便利な機器であると言えます。

【著者略歴】

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/政策文化総合研究所所長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」「プログラミング/システム」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)、「メタバースとは何か」「Web3とは何か」(光文社新書)など。


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