トランプ政権が発動した「相互関税」について、米連邦最高裁は2月20日に「違法」の判決を下した。高率関税に脅されてきた日本を含む対米輸出国では「司法が独立性を発揮した」などと歓迎する評価が多いが、米国の通商政策がトランプ政権以上に保護主義化する恐れがある。トランプ政権は早速バックアップ・オプション(代替策)として通商法122条による10%の追加関税を発動し、さらに税率を同法が定める上限の15%に引き上げる。
課税期間は150日間だが、期限までに同301条による課税への切り替えを目指す。米通商代表部(USTR)による調査・報告を受けて、連邦議会が具体的な制裁を決める条項だ。数量制限など関税より厳しい貿易制限を課すことが可能で、課税期間(4年間)の更新もできる。
大統領の裁量で税率や課税期間を決めるのと比べると、連邦議会の手順は複雑で時間もかかり硬直的になる。通常は大統領府よりも連邦議会の方が保護貿易に傾きやすい。「トランプ関税の方がましだった」となりかねない。
そもそも、トランプ関税とは何なのか。米国の農業分野は、中国の報復措置で巨大市場をブラジルなど競合する農産物輸出国に奪われ、穀物相場が低迷して苦境にある。それでもなお、米国の農業者の多くがトランプ政権を支持するのはなぜなのか。こうした根本的な疑問を考えるため、農政ジャーナリストの会は25年10月から12月にかけて4回の連続研究会を開いた。
本書はその採録である。目玉は米国中西部を拠点に取材を続けてきたベテラン農政ウォッチャーのクリス・クレイトン・DTN社農業政策担当のオンライン講演だ。大統領と連邦議会の力関係から、バイオエタノール、米農務省の栄養プログラムまですべての疑問に分かりやすく答えている。日本語で読める同氏の文献は本書が初めてだ。
平澤明彦・農林中金総合研究所理事研究員は、トランプ関税や米国の農業政策について概説する。作山巧・明治大学教授は、トランプ政権の関税政策は「世界貿易機関(WTO)のルール違反」と厳しく批判する。一方、渡邉真理子・学習院大学教授は、中国が戦略的に輸出産業を保護育成し、国際的な過剰生産を招いた背景を重視し「事後的な対策」として相互関税に理解を示す。
巻末の「現地レポート」として、深刻さを増しているクマ被害について、岩手日報社の論説委員長と秋田魁新報社の政治経済部部長代理による2本の寄稿も収録している。本書は、一般社団法人農山漁村文化協会(農文協)から2026年3月1日に出版された。1320円(税込み)。
(共同通信アグリラボ編集長 石井勇人)
![b.[ビードット]](https://d26qpuj9rvgv8w.cloudfront.net/wp-content/uploads/2018/04/Logo-5.png)
