先日、知人から、簡易郵便局開局の案内が届いた。宮崎県えびの市永山地区に、大溝原(おおみぞばる)簡易郵便局がオープンしたという。
この簡易郵便局は、局長不在となり一時閉鎖され空き家となっていたが、新局長のもとで改修を行い、再出発を果たした。
郵便・貯金・保険の窓口業務は平日午前9時から午後4時となっている。残念ながらATMはない。だが、注目されるのは、局舎の一部が地域住民の交流スペースとして開放されていることである(写真)。「地域に寄り添う郵便局」として、「郵便局に用がなくても気楽に時間をつぶせる空間を目指します」というコンセプトが掲げられている。
郵便局に入ると、窓口にも椅子があり、利用者は椅子に座って貯金の手続きや切手の購入などを行うことができる。また、テーブルも設置され、図書コーナーもある。この郵便局スペースは「本と音楽と茶いっぺ」と名付けられており、その名の通り、音楽の流れる郵便局の空間で、利用者はお茶を飲みながら本を読んで過ごすこともできる。
郵便局の裏にも二つのコミュニティースペースが準備されている。一つが「Post House Nzubai」。地域の居場所として、集い、活動し、宿泊することもできる空間である。もう一つが「オープンスペースKATARIBA」。開局からしばらくの間は、地元のアーティストの作品展示が行われている。
簡易郵便局は、民間との委託契約に基づき設置されるもので、経営や運営の柔軟性が高く、地域主体の創意工夫が可能である。
宮崎県内では他にも日南市の日南星倉簡易郵便局でゲストハウス(宿泊施設)を運営して収益を確保しながら郵便局機能の存続を図る例がある。また、えびの市内では上江簡易郵便局が地元中学生と花を植え、コミュニティーとの絆を育む活動もある。このように単なる郵便サービスを提供する場所にとどまらず、地域の居場所、ないし玄関口としての機能を担う例が、各地で見られるようになってきた。
えびの市では高齢者が人口の4割を超え、公共交通の空白地帯も多い。郵便や貯金などの窓口に日常的にアクセスできる場所の存在は、生活の質そのものに直結する。あわせて、住民同士の交流や見守りといった役割への期待も高まる。
全国的にも、郵便局が買い物弱者への支援や災害時の拠点、地域福祉のパートナーとしての機能を果たす事例が生まれており、地域の拠点として多様な役割が注目される。今後は、こうした郵便局を地域包括ケアや防災、福祉、特産品販売などと結び付けるための制度の見直しや支援の充実が求められそうだ。大溝原簡易郵便局では今後、空き家の見守りサービス導入や、道の駅との連携も模索していくという。
郵便局が地域の新たなゲートウェイとしての機能と役割を果たすことができるよう、制度と現場の接続が鍵となりそうだ。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.20からの転載】