b.[ビードット]
ポップコーン、いただいてから1年半後にようやく作った。おいしい

贈り物の行く末を案ずる  野々村真希 農学博士  連載「口福の源」

 もう1カ月以上前の話になってしまうが、このたびの年末年始は休みが長かったので、家の冷蔵庫や食料棚に長い間残っていた食べ物たちの一掃に取りかかった。もちろん捨てるのではなく食べることによってである。アマランサス、冷凍したマスカット、リゾットの素、しいたけ茶とごぼう茶、乾燥タイプの海藻サラダ、ポップコーン用とうもろこし、そうめんのふし…。

 物をため込むのは嫌いなたちだが、いずれも食べる習慣があまりない物だったので、ふだん仕事・家事・育児に追われている中では使い切ることになかなか手が回らず、もやもやしながらもずっと放置していたのだ。嫌いというわけでもないし、マスカットや海藻サラダなんて、ただ食べればいいだけなんだけど、余裕がないと、そういったイレギュラーな物の消費を生活ルーティンの中に入れ込むことが、とても難しくなる。

 しかしあらためて放置していた食品を列挙してみると、人からいただいた物と、自分が旅先で買ったお土産ばかりである。人からもらった物が食品ロスになってしまうケースが少なくないことは、これまでの研究でも指摘されてきた。自分が行う食品ロス調査でもいつも遭遇する。贈り物をすることは相手に気持ちを伝える大切な手段だし、いただく側にとっては生活に彩りをもたらしてくれる。旅先でのお土産の購入は地域経済にもきっと貢献するだろう。けれど、買った物が、贈った物が、結局ゴミになってしまうことも珍しくないとしたら。買うこと・贈ること自体に意味があって、その後どうなるかは重要ではない? いや、そんなことはないはずだ。そのように考えてしまうので、自分はそう気軽には人に贈り物ができない。自身へのお土産の購入も、たいていは、かなり慎重になる。

 人から食べ物をもらった、けど食べ切る自信がない、という方がおられたら、なるべく早く、ご近所さんに配ったり、職場に持っていったり、役所とか環境学習施設とか、ファミリーマートとかイオン系列のスーパーとかに設置されているフードドライブボックスに寄付したり、(めったに見ないがもしあれば)地域のコミュニティ冷蔵庫に入れたりすることを提案したいところである。

 ただし、ちょっと個性的なお土産については、もしかしたら配ったり寄付したりした先で同じ扱いを受けるかもしれないから、年末やお盆休みなど一息つけそうな時を見計らって、ご自身で食べ切りに挑戦することも考えてみてほしい。余った食べ物を使って料理することは「サルベージクッキング」と呼ばれたりしていて、ネット検索すると面白そうな関連情報がいろいろ出てくるし、きっと参考になると思う。贈り主や作り手の思いがこもった食べ物がどうかおいしくお腹に収まりますようにと、ささやかな提案をする次第である。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.7からの転載】


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