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「身」という漢字は、胎児を身ごもっている妊婦の姿を表す象形文字

学歴より食暦  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」

 今現在、「すこぶる健康!!」と自信を持って言えますか?今のコンディションは、これまで何をどのように食べてきたかの結果でもあります。「学歴より食暦」です。今日の食事は未来のあなたを作ります。日々の食暦を良食習慣で高めていきましょう。

 日本には「身土不二(しんどふじ)」という仏教用語がありますが、「身」と「土」は、切り離せないという意味があります。大正時代に食養会(明治の軍医、石塚左玄が唱えた食養を普及・実践する団体)が「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い」という意味合いで提唱しました。

 「身」という漢字は、今にも生まれ出しそうな胎児を身ごもっている妊婦の姿を表す象形文字です。「体」は、肉体と解釈できます。

 「一〝体〟上の都合」「〝体〟の上ばなし」「〝体〟からでたサビ」とは言わず、「一〝身〟上の都合」「〝身〟の上ばなし」「〝身〟から出たサビ」と言うように、「身」の字には、命・心・体・生活・人生・人格など、精神や魂を含む、人間の全人格を示し、人間本来を表す深い意味が詰まっています。「身を守る」ことは、心を守ることでもあるんだなと感じ取れます。

 旬の食材を活用することはもちろん、よく噛(か)んで味わうことで、口腔だけでなく消化器全体の働きを助け、全身の健康維持にもつながります。

 食事の時間もまた、私たちの「身」をつくる大切な時間です。食べることは単なる栄養補給にとどまりません。一人で食べる食事であれ、食と向き合い味わう時間は、心を豊かにし、また、家族や友人と囲む食卓は、コミュニケーションを深める場となります。

 「身」は「実(み)」とも書き換えられるように、本物や真実を意味します。何かを「身につける」という表現がありますが、知識や技術、習慣は、一朝一夕で得られるものではありません。良食も同じです。健康寿命を延ばすためには、日々、良食を実践し、良食習慣を身につけることが大切です。

 ただお腹を満たすだけを目的に食べ物を選ぶのではなく、手に取った商品の成分を意識して選んでみることも大切です。私たちは、動物、植物の「命」をいただき生きています。口に運ぶものが、どんな「命」であるかを確認する習慣をつけてみましょう。

 日々の食事が「身」を作るという視点を持つと、一口一口の大切さが見えてきませんか。まさに、どう食べるかは口福の源です。よく噛んで味わい、感謝の気持ちを持って食事をすることで、あなたの「身」はより健やかに、輝きを増していくでしょう。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.5からの転載】


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