公立中学校の部活動の地域移行への試みに、バディスポーツ幼児園などを運営する株式会社バディ企画研究所(鈴木威・代表取締役)が取り組んでいる。地域移行はスポーツ庁と文化庁が国の政策として進めているが、地元自治体と民間が主体的に動かなければ実現しない。1982年から幼児園の運営に携わってきた鈴木代表は「自治体はコスト重視にせず、望まれる指導者の下で活動させるべきだ」と持説を展開する。
▽役所の発想では実現不可能
保育園とスポーツクラブの機能を併せ持つバディスポーツ幼児園は首都圏を中心に8カ所あり、スポーツを採り入れた幼児教育が特色で、入園時には入園希望者の倍率が数倍になるなど人気が高い。サッカークラブなども運営しており元日本代表の武藤嘉紀(神戸)らを輩出している。中学校部活動の地域移行の試みが始まった時、バディグループでも実績を生かせるとして、都内の中学校のバドミントン部に元五輪選手を無償で派遣した。その後、本格的に移行が始まった時の区役所の入札では落選。逆に落札した会社が、直後に時給千数百円で指導者を募集していた。こういう状況に鈴木代表は「コストを重視する役所の発想では、本当の部活動はできない。こういう流れを阻止したい。指導者派遣は今後、グループの事業の大きな柱になる」と力を入れ始めた。
▽ふるさと納税で活動支援
立ち上げた「株式会社クラブ活動支援」は、スポーツクラブやスポーツ団体と連携し、すぐれた指導者をプール。学校や自治体の求めに応じて、指導者を派遣することを事業の柱とした。パートナーとして組んだのが東京都稲城市だ。ふるさと納税に
「稲城市中学校の部活動を応援」の項目が寄付金の使途に追加された。施設利用料や指導者の報酬、用具の購入などの資金に寄付金が充てられ、持続可能な部活動支援となっていく。茨城県守谷市とも連携が始まっている。活動支援社の事業には、多くの企業も注目し協賛している。
▽環境改善で後輩へエール
73歳の鈴木代表は学生起業家のはしりで、19歳から始めたビル清掃業で「30歳までに8000万円をためた」という。その資金を元に幼児教育に乗り出した。「ビル清掃は働いた翌々月に入金されるが、教育は先にもらえるから」と冗談めかして話したが、東京学芸大卒だけに、生き方の根底には教育があるようだ。部活動の地域移行の背景には、公立校の教員数の減少と勤務負担増の解消もある。「公立校教員の環境を改善し、教育のレベルを上げなければ」という言葉に、後輩たちへの思いがにじむ。