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講師を務めたマネックス証券の吉野貴晶さん

身近なことから「景気読む目」養う AIに投資委ねる危険性も 金融教育講義で日体大生200人

 横浜市の日本体育大健志台キャンパスで6月11日、経済の専門家を講師に招いて金融・投資の基本を学ぶ、学生対象の金融教育講義が開かれ、200人余りの学生が身の回りで日々生じている小さな経済事象から景気・株価などの大きな経済の動きを捉える、投資に有効な“経済を見る目”を磨いた。

 講師のマネックス証券(東京都港区)チーフ・マーケット・アナリスト、吉野貴晶さんは「日々の経済事象と景気や株価の動向の関係を調べると面白い相関関係(アノマリー)が浮かび上がってきます。皆さんも身の回りの変化や日々接するニュースの中から大きな経済の動きにつながるような、自分なりの指標を見つけてください」と話した。

 講義は午前・午後の計2回行われ、スポーツマネジメント学部2年生を中心に各回100人余りの学生が出席した。「サザエさんと株価の関係―行動ファイナンス入門」などの著書がある吉野さんは、ビール・発泡酒の売り上げやマグロの初競り価格、政権支持率などの経済・政治事象だけでなく、サッカーW杯での日本代表の活躍、サクラの開花時期など身近な話題も挙げて、経済・政治事象や社会的な話題と景気・株価との相関関係を紹介した。

 例えばビールの売り上げが発泡酒の売り上げを上回った場合は、景気・株価の上向きサイン、逆に下回った場合は下降サインの先行指標として捉える考え方などを説明した。より高価格であるビールの消費行動から、経済動向を“読む”手法の一つという。サッカーW杯と景気・株価との関係では、過去のデータを見ると日本代表の活躍と代表ユニフォーム販売会社ら関連企業銘柄の株価との顕著な相関関係は見られなかったとした。併せて、W杯の勝敗と株価の関係を学術的に分析した行動ファイナンスの論文の内容にも触れた。

 吉野さんはモノの値段が上がるインフレと、値段が下がるデフレの違いなど、投資を始める際にしっかり理解しておくべき基本的な事柄を改めて説明した上で、投資分野で使われている「投資」と「投機」の違いにも言及。国語辞書的な説明だけでは、投資上重要な投資と投機の違いが明確にならない、としてクラフトビールへの出資を投資、商品先物市場での小麦売買を投機の事例としてそれぞれ挙げ「使ったお金が“価値”を生むのが投資で、“価値”を生まないのが投機」と指摘。「投資、投機のどちらが良いとか、悪いとかではなく、価値を生むかどうかの点で両者には本質的な違いがある」と明快に解説した。

午前中の授業は100人ほどの学生が出席した

 

 また現在の株式市場の大きな関心を集めている人工知能(AI)の動向にも触れ、相場が過熱し株価が高騰した2000年代の「ITバブル」の例も紹介。AIの進化の限界がある程度見えるまでは、株式市場の“AI熱”は「しばらく続くのではないか」との見通しを示した。さらにAIの回答をうのみにして投資することの危険性にも言及し「株式市場の開始前に10回、その日の株価をAIに予想してもらったが、すべて異なる回答で、すべての予想は外れた。AIへの聞き方にもよるかもしれないが、投資判断においてはAIのみに頼るのはよくない」と述べ、投資判断を丸投げするAI活用に警鐘を鳴らした。

 講義終了後はこの日の講義をコーディネートした日本体育大の竹腰誠教授が「今日は初めて聞いた専門的な言葉も多かったかもしれませんが、皆さんが社会に出て5年、10年先になれば、今日聞いたお金の話はきっと役に立ちます。分からなかった部分は積極的に質問してください」と述べ、お金についての継続的学習を呼び掛けた。

講義後、講師に質問をする五十嵐瑠奈さん(左)

 

 この日、吉野さんの講義を受講した日本体育大スポーツマネジメント学部4年生で、今年のミラノ・コルティナ2026冬季五輪にフリースタイルスキー・女子エアリアル競技で出場した五十嵐瑠奈さん(21)は「少額の積み立て投資はしていますが、本格的な投資は未経験です。投資や投機の違いなど基本的なことを初めて知りました。身の回りの身近なことも経済や株価、景気のことを考える上でいろいろなヒントになることを理解できました。今後はこうした視点も踏まえながら、経済などさまざまなニュースにも関心を持っていきたいと思います」と話した。

 選手生活を終えた後のいわゆるセカンドキャリアについては「まだまだ先のことなので明確なイメージはありませんが、女子エアリアル競技や地元の北海道名寄市に何かしら貢献できればと思っています。セカンドキャリアではお金のことも大事になると思いますので、今日の講義はお金のことを基礎から考える貴重な機会になったと思います」と述べた。

金融教育講義に力を入れている日本体育大

 

 日本体育大の金融教育講義は2023年から毎年開かれ、マネックス証券が金融教育支援の一環で毎回講師を無料で派遣している。マネックス証券では、日体大以外にも要望のある大学や高校に講師を派遣するなど、金融教育支援に力を入れている。


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