元農水次官の奥原正明東大大学院客員教授は11月10日、都内で開かれた「きさらぎ会」(共同通信社主催)で、「農業政策の歴史と今後の方向」と題して講演し、鈴木憲和農相の「コメ減産」発言について「(石破政権からの)方針転換の印象を受ける。長期ビジョンを示さないと何をしようとしているのか分からない」と述べた。その上で「生産の拡大に転じることが必要」と指摘、そのためには生産コストの引き下げが必要で、米価が低下する場合にはプロ農家を対象にした収入保険制度でカバーするべきだと指摘した。
奧原元次官は、「農業経営の大規模化を加速し、生産性の向上につなげていくことが重要」と強調し、「プロ農家中心の生産性の高い農業を育成するべきだ」と述べた。そのためには「農地の集積・集約化に総力を挙げることが最優先」と指摘し、具体策として、農地利用の集積・集約化、農業界と経済界の連携による流通改革、輸出促進の3点を挙げた。
特に農地の集積・集約化については「農地の所有者に働きかけるだけでは限界」と指摘、具体策として、農地バンクへの貸し付けを義務化するための法改正、農地バンクに貸し付けられた農地の土地改良事業(大区画化など)の全額公費負担、自治体や農業委員会の体制強化を提案した。集約・集積が難しい中山間については、対象を厳格に絞り込んだ上で使途を限定しない補助金を交付し、平地との対策とは明確に区別することが重要だと指摘した。
農業協同組合については「改革が進んでおらず、このままいけば組織の自壊が想定される」と懸念を示し、「仕事のやり方を変えれば、日本の農業の発展に大きく貢献できる」と改革を促した。

(共同通信アグリラボ編集長 石井勇人)
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