女性の農業との向き合い方が変わりつつある。岐阜県で活躍する女性たちからそう実感した。日本の農業の担い手の半数近くが女性だ。仕事と家庭の両立を求められる農村社会で、女性には多くの負荷がかかってきた。家の農業以外に、農産加工や農家レストランなどで起業するスーパーウーマンも活躍しているが、「出る杭(くい)は…」方式で、保守的な農村では理解されず、悔しい思いをしているという話を聞く。
1月に開催された「ぎふ農業・農村男女共同参画推進オンラインフォーラム」で3名の女性農業者に出会った。いずれも県南部にある人口約6千人の町、富加(とみか)町で農業を営み、次世代のロールモデルとなる女性農業経営アドバイザーに認定されている女性たちだ。
堀田丹奈(ほった・にな)さんは非農家出身。2011年、夫と共に就農してイチゴ生産を始めた。仕事や子育てに忙しい日々を送りながらも、時間をみつけて観劇やコンサートに出向く。「仕事と家事の”両立”と聞くと、女性にやや負荷がかかる感じがするので、私は夫婦で”協力しあう”ことに努めている」という。農業に憧れて新規就農した河野奈央子(かわの・なおこ)さんは、アスパラガスを栽培している。肉牛で就農した夫とそれぞれ別の経営をしてきたが、昨年経営を統合し、それぞれが代表をつとめる。アスパラガスは直販が中心で、消費者を畑に招いて交流しながら、農業の魅力を発信している。「時に焦りやプレッシャーを感じるが、農業が好きだという思いは変わらない」と笑顔が魅力的だ。河野美文(かわの・みふみ)さんは鉢花の専業農家に嫁いだ。「農家の嫁」というと、嫁ぎ先の農業に専念する姿を思い浮かべるが、美文さんは「子育てと自分のしたいことを大切にしたい」と、短時間のパートとして仕事を手伝った。念願だったデザインを学んだ上で、満を持して昨年、取締役となり生産部門で采配を振るっている。
3人の共通点は、自分の思いを明確にし、それを家族が理解し、サポートしている点だ。総務省の社会生活基本調査(21年)によると、男性が家事・育児を担う時間は女性の4分の1と少ないものの、男性が家事に携わる時間は過去に比べて延びている。農村は保守的といわれるが、個々の家庭では浸透しているのだろう。地域全体で見れば、依然として保守的な考え方があることは事実だ。それでも、3人が実践している農業スタイルが広がっていけば、後に続く女性も増えていくはず。気負うことなく、農業を職業の選択肢の一つとして捉えるようになれば、農業へのイメージも変わる。担い手不足、コスト高など課題ばかりが注目される農業界だが、変化し、前進している生産現場にもっと目を向けたい。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.4からの転載】