囲碁の第49期碁聖戦(主催:新聞囲碁連盟、日本棋院、関西棋院)を制した井山裕太碁聖(35)の就位式が10月4日、ホテルニューオータニ(東京都千代田区)で開かれた。井山碁聖は、挑戦者の芝野虎丸名人(24)を3勝0敗で退け、4連覇を達成。碁聖獲得は通算10期となり、9期の小林光一名誉碁聖(72)を抜いて単独最多になった。
会場には、日本棋院の武宮陽光理事長ら囲碁界関係者や、全国の新聞社13社で構成する新聞囲碁連盟の北國新聞社・砂塚隆広社長ら計約70人が集まり、井山碁聖の栄誉をたたえた。式典の終了後は、井山碁聖を囲みながら、立食形式のパーティーとなり、会場はお祝いの雰囲気に包まれた。
王座、十段と合わせ三冠を堅持した井山碁聖は「芝野さんとはいろいろなタイトル戦で戦っていますが、今回は3連勝という最高の形で一つ結果を残すことができ、とてもうれしく思っています」とした上で「来期の碁聖戦でも成長した姿をお見せできるよう精いっぱい頑張っていきたい」と意気込みを語ると、出席者からは大きな拍手がわいた。
▽「リスクを恐れない独創性」
碁聖戦を主催する新聞囲碁連盟は、全国の新聞社13社(河北新報社、静岡新聞社、信濃毎日新聞社、新潟日報社、北國新聞社、京都新聞社、山陽新聞社、中国新聞社、四国新聞社、高知新聞企業、熊本日日新聞社、南日本新聞社、沖縄タイムス社)で構成。
この日の就位式冒頭、連盟を代表して北國新聞社の砂塚社長が、「立派な成績を残された。あらためて栄誉をたたえたい」とお祝いの言葉を贈った。今回の碁聖戦については「第1局は白星スタートを切り、金沢市の北國新聞会館で行われた第2局では、連勝を収めて勢いに乗り、第3局で見事、防衛を果たされました」と振り返った。
砂塚社長は「(井山碁聖は)リスクを恐れない独創性ある棋風で多くのファンを魅了し続けており、若手の台頭が著しい囲碁界で第一人者としてリードしておられる。これからも素晴らしい対局を披露されることを念願しています」とあいさつした。
▽「貫禄と充実ぶりを示した」
次に、日本棋院を代表して武宮理事長があいさつ。「今回は、めざましい活躍を続ける芝野さんを挑戦者に迎えての5番勝負でした。最も勢いのある挑戦者を無傷の3連勝で退け、見事、4連覇を達成されました」と語った。武宮理事長は碁聖戦を振り返り「囲碁界の第一人者として貫禄とその充実ぶりを示されたシリーズだったのではないか」と評価し、「今回の碁聖位の通算獲得回数の記録を塗り替えて歴代1位になり、総タイトル獲得数も歴代トップタイに並びました。井山さんには今後も記録を更新していただき、一層のご活躍を願っています」と期待感を示した。
続いて、関西棋院の榊原史子常務理事が登壇し、「井山碁聖は関西出身ということもあり、小さい頃から存じ上げていました。これまでさまざまな記録を塗り替えてきていますが、私は歴史の生き証人のように間近で目撃することができました」とあいさつ。「勢いのある芝野さん、一力さん(一力遼三冠)も、井山碁聖という高い目標があったからこそ、実力をつけてこられ、その功績は大きいと思います。井山碁聖には、世界で優勝という偉業もぜひ達成していただきたいと願っています」と語った。
武宮理事長による井山碁聖への允許(いんきょ)状授与、北國新聞社の砂塚社長からのトロフィー・賞金の授与を行った後、囲碁ファンで囲碁大使も務める俳優の辰巳琢郎さんが祝辞を述べた。
辰巳さんは「井山さんの存在、活躍は、大リーグの大谷選手よりもずっと上ではないかと思っています」と話し、会場の笑いを誘った。その上で「自分より井山さんは31歳も若い。元気な若手棋士の大きな壁となり、囲碁界の頂点として引っ張っていただきたい」とお祝いの言葉を述べた。
花束贈呈は、囲碁アマチュア四段で、シンガーソングライターのJoanna(ジョアンナ)さんがプレゼンターを務め、井山碁聖は笑顔で受け取った。
式典の最後に井山碁聖は謝辞で「碁聖戦は自分にとって、最も相性のよい棋戦になっているかと思います。世界に目を向けると、私も30代の半ばにさしかかっているのですが、世界では長老のような扱いを受けています」と語り、会場から笑い声が起きた。「気持ちだけは若く持ち続けて、まだまだ伸ばしていける部分があると信じ、精いっぱい頑張っていきたい。本日はありがとうございました」と締めくくった。