荒井由実(松任谷由実)の「中央フリーウェイ」の歌詞に出てくる「ビール工場」。中央高速道の東京都府中市辺りを走ると「右に見える競馬場」(東京競馬場)の向かいにある「左はビール工場」が「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」だ。
1963年、ビール市場に参入したサントリー(東京)が国内で最初に造った工場で、昨年60周年を迎えた。工場見学もでき、ビール好きを喜ばせているが、このほど見学ツアーをリニューアル。4月10日からの一般公開に先立ち、「新・工場見学ツアー」の概要を公開した。
▽プレモル誕生
東京・武蔵野工場は、サントリーの主力商品「ザ・プレミアム・モルツ」(プレモル)や「サントリー生ビール」「金麦」などを製造。プレモルは、この工場で誕生したといい、見学ツアーはプレモルの“こだわり”について知ることができる。
梅澤祐輔・工場長は、1989年に武蔵野ビール工場に開設した20分の1の大きさの「ミニブルワリー」で「失敗と挑戦の連続で試行錯誤しながら結実した(創業精神の)“やってみなはれ”の象徴だ」と「プレモル誕生秘話」を教えてくれた。
▽天然水+つくり手の情熱
見学ツアーは、麦芽、ホップといった「素材選び」に始まり、「仕込」「発酵」、熟成させる「貯酒」、「ろ過」を経て、缶に詰める「パッケージング」までの過程を案内係が解説しながら工場内を回る。
リニューアルについて、ビールカンパニーの中村昌平プレミアム戦略部課長は「これまで見学ツアー参加者の声で一番多かった印象が『天然水へのこだわり』だった」と説明。「プレモルの魅力をさらに伝えるために『つくり手の情熱』を加味した」と話した。
▽スコープで検査室見学
具体的なリニューアルの内容として、最初に動画「つくり手の挑戦ムービー」を見てから見学をスタートさせることにしたという。また、新たに導入したのが「つくり手のこだわり」を知ることができる「官能検査室の疑似体験」だ。ビール製造過程で人の五感を使って味・香り・喉ごしなどをチェックする検査で、検査室に入ることはできないが、「VR(仮想現実)スコープ」を使って検査の様子を見ることができる。
▽試飲時間を延長
さらに「見学者が一番楽しみにしている」というビール(プレモル)の試飲ができる「ゲストホール」もカウンターを設置するなど改装した。ゲストホールまでの通路を「つくり手ロード」と名付け、工場で働く人たちの姿をパネルにした通路を通って「飲む前のワクワク感を演出した」。
試飲ではプレモルを3杯まで飲むことができるが、試飲時間をこれまでの20分から30分に延長し、ゆっくりビールを楽しめるようにしたという。ツアー全体の時間も70分→90分に延ばした。ツアーは定員25人で1日6回実施。料金は1000円(税込み)。
サントリーによると、2023年のビール類市場は業界全体で前年比マイナスだったといい、ビール離れをうかがわせる。近年は、若者のアルコール離れや、ハイボールブームもあってビール類市場の低迷を指摘する向きもある。
中村氏は「ビールは人を元気にする」と強調。中央高速から見える知名度がある「ビール工場」のリニューアルした見学ツアーで「市場を活性化させたい」と期待をかけている。