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サントリーの主力ビールのラインアップ

サントリー「限定ビール」で消費拡大狙う 10月の酒税改正に合わせ戦略強化

 長引く猛暑でビールがおいしい季節が続いている。ただ、さまざまな物価が上がる中、この10月には酒税改正が控えており、ビール好きにとっては価格が気になるところだ。サントリー(東京)は8月22日、酒税改正を迎える市場動向を踏まえた同社のビール事業についてのマーケティング説明会を開催した。

 登壇した多田寅(ただ・すすむ)ビールカンパニーマーケティング本部長は、今回の酒税法改正は「ビールにとって追い風だ」と強調。サントリーとしてビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の中でビールの戦略を強化する方針を示した。

「限定デザイン缶で思いっきりご褒美感を出したい」と話す多田寅ビールカンパニーマーケティング本部長

▽価格差縮まる

 改正された酒税法は3段階に分かれている。2020年10月にはビールの税率が下がり、第3のビールは税率が上がった(発泡酒は据え置き)。23年10月はさらにビールの税率が下がり、第3のビールは上がって発泡酒と同率に。26年10月にはビールが下がり、発泡酒・第3のビールが上がって税率が一本化。このため、ビールと最も低価格だった第3のビールの価格差が縮まることになる。

 酒税法改正を背景にビール業界では、ビール需要が高まるとみており、低価格が売りだった発泡酒や第3のビールは戦略の練り直しが迫られている。多田氏は「アクセルをどこに踏むかといえば、『ビール』だ」と述べ、サントリーの主力ビール「ザ・プレミアム・モルツ」「サントリー生ビール」「パーフェクトサントリービール」についての新戦略を打ち出した。

▽いつもと違うビール

 新戦略のコンセプトは「限定品によるトライアル(試行)最大化」だという。「プレモル」の愛称で知られ、発売20年を迎えた「ザ・プレミアム・モルツ」は今年、味や缶デザインをリニューアルし、「週末のご褒美」というブランドイメージを強化した。さらに10月17日に“ご褒美感”を高めた金色の「ザ・プレミアム・モルツ」と、青空に浮かぶ雲や鳥などをあしらった「同〈ジャパニーズエール〉香るエール」のデザイン缶を数量限定で発売。「同〈ジャパニーズエール〉ゴールデンエール」については、冬限定品を発売する。

金色で「ご褒美感」を強調した「ザ・プレミアム・モルツ」(左)、雲や鳥などをコラージュした「ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉香るエール」(中央)、冬限定で発売する「ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉ゴールデンエール」(右)

▽糖質ゼロの黒ビール

 糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」は、黒ビールを10月3日に市場投入する。多田氏は「黒ビールは飲み応えが求められる一方、糖質ゼロはすっきり感が大事でバランスが難しかった」と開発に苦労したことを明かした上で「糖質ゼロの黒ビールは日本初だ」とアピールした。

糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」に黒ビール(右)が加わる

 サントリーの定番ビールだった「ザ・モルツ」に代わるブランドとして今年4月に発売した「サントリー生ビール」は、販売が好調だといい、2023年の販売計画を300万ケースから400万ケースに上方修正した。新型コロナの感染が落ち着き、店舗での需要が戻りつつあることから、24年春には「サントリー生ビール」の瓶と樽(たる)を発売し、業務用も強化する。

販売好調の「サントリー生ビール」は来春、業務用で樽生を投入する

▽「金麦」は継続

 一方、低価格が魅力だった第3のビールの今後について、多田氏は「ブランドの淘汰(とうた)が進む」とする考えを示した。サントリーの主力「金麦」は「毎日、家で飲むのにふさわしいと消費者に受け止められている」として、発泡酒を扱っていないサントリーは、第3のビール「金麦」のブランドイメージを継続していくという。

 10月の酒税改正では、税率の変動に合わせ、店頭価格も変化するとみられている。低価格のわりに、味はビールに近づいたとして第3のビール愛好者は多い。ビール業界が戦略を再構築している中、われわれ消費者も購入戦略を練り直す必要があるかもしれない。


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