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教育現場でのAI活用の在り方を議論した東京青年会議所主催のセミナー

学校のAI活用の在り方議論 東京青年会議所がセミナー

 人工知能(A I)と教育をテーマにしたセミナー「AIと創る未来の教育」(東京青年会議所主催)が2月22日、東京都内で開かれ、教育関係者ら350人がAIの教育活用策などを巡る識者の議論に耳を傾けた。

 セミナーは、教育現場へのAI普及などを目的に東京青年会議所が2月例会として教育関係者を主な対象に開催。社会構想大学院大教授・中川哲氏、合同会社未来教育デザイン代表社員の平井聡一郎氏、教育改革実践家の藤原和博氏の3人がそれぞれの視点から講演した後、この3氏に教育AI活用協会代表理事の佐藤雄太氏を交えた4人で、AIの導入・活用における現場リーダーの役割などを巡りパネルディスカッションした。

 文科省在籍当時に小学校のプログラミング教育を担当した中川氏は「先生が指示しなくても子どもたちは自己流でAIを使っており、プラウザの語句検索のAI回答・要約をそのまま信じてコピペしてしまう子どもがいる」と子どもたちを取り巻く“AI環境”を報告。

 「プラウザで検索すればAI回答、要約が出てきてしまう現状ではAIの使用禁止はありえない。先生は、子どもたちのAI使用を前提に、AI回答の根拠を調べ吟味する考えるプロセスが大事なことを子どもたちに教え、深い学びにつなげていかなければならない。大人たちは、子どもたちがAIを使うことで考えなくなることを防止しなければならない」と話した。

「深い学び」と「浅い学び」の違いを解説する中川哲氏=2026年2月22日、東京都千代田区のTokyo Innovation Base

 

 小学校へのタブレット導入を推進した平井氏は「生成AIが登場するなど社会が変化し、社会で求められるスキルが変化し高度になった。だから学校の学びも変わらざるをえない」と指摘した上で

 「子どもたちが使う前に、先生方が公務でAIをどんどん使ってほしい。例えば若い先生が、子どもたちの“深い学び”を実現する授業内容を検討する際、AIと対話しながら共に考えていくことが大事だ。その際はベテランの先生たちにも手伝ってもらい、若手とベテランが一緒になってAIへのプロンプト(指示・命令文)を考えるとよい。そうすればベテラン教師の貴重な知見が次代の先生たちに伝承されるからだ」と述べ、AI活用による教育知見継承の利点を強調した。

次期学習指導要領の方向性も説明した平井聡一郎氏

 

 東京都杉並区立和田中校長を務め東京都内の義務教育校で初めての民間出身校長となった藤原氏は、山梨県内の中学校や高校で2022年から展開する「よのなか科の授業」(正解のない問いに対し意見を出し合う思考技術トレーニング)を、会場の参加者を“児童・生徒”に見立てて行い、具体的にどのように子どもたちの思考力を「よのなか科の授業」で鍛えているかを会場参加者に体験させた。

 藤原氏は「早く“正解”を出す子が良い子とされたこれまでの“正解至上主義”の教育は、完全に時代遅れになっている。いまは“賢く疑える思考力のある子ども”を育てることが求められている。例えば、ネットの情報の半分はうそといってよく、詐欺や生成AIを使ったうその情報があふれている。だからネットの情報に触れるときに“これって本当かな“と考えられる批判的な思考力が絶対に必要になっている」とネット情報の真偽を見極める思考力の大切さを強調。

 その上で「これからの時代は情報の扱いが上手いか下手かで幸せの半分が決まるだろう。情報の扱いには、正解がある問題を早く正確に解く情報処理力(いわゆる基礎学力)と正解が一つではない課題に自ら仮説を立てたり、他人の仮説を聞いたりして納得できる自分なりの解を、修正を繰り返しながら追求できる情報編集力(いわゆる思考力、判断力、表現力、コミュニケーション力など)の2つの面があり、これからの子どもたちにとって大事になるのは情報編集力だ」と述べ、「これまでの情報処理力偏重の学校教育は情報編集力を大切にする教育に変えていくべきであり、理想としては小学校では1割、中学校では3割、高校では5割を情報編集力の養成に充てるべき」と語った。

参加者にテーマを与えて一緒に考えてもらう会場参加型の講演を行った藤原和博氏

 

 教育現場へのAI活用普及に取り組む佐藤氏がモデレーター(司会進行役)を務めたパネルディスカッションでは、AI活用に関して教育現場で共有すべき前提・価値観のほか、個々の先生ではなく学校全体でAIを活用していくため最初に取り組むべきこと、学校現場でAI活用を定着させるため管理職・リーダー求められる行動の3点について中川、平井、藤原の3氏が意見を交わした。

 AI活用の“前提”として、中川氏は「AIは形式化した知識(形式知、インターネット上の情報)しか持てないこと」に目を向ける必要性を強調し、「形式知はAIで事足りる時代には、人間にしか持てない“暗黙知”(個人が感じたこと、考えたこと、体験したこと)が大切になる。AI活用の前提としては、子どもたちがいろいろな経験をして暗黙知を獲得する重要性を強調したい」と述べた。

 学校全体でAIを活用するためにまず取り組むべきことを巡り、平井氏は「人間にはあえて使い慣れた不便なものを使う不思議な性質があり、こうした意識を改めてもらうために多少強引でも最初は公務での使用を強制する取り組みが必要だと思う。つらいかもしれないがまずはAIを使うことが大切だ」と話した。

 AI活用を定着させるために求められる学校の管理職・リーダーの行動面の意見交換では、藤原氏は「教頭や指導主事、教育長らがこれまでやってきた業務(作文やアンケート、ポスター掲示など国をはじめとした公的機関からの依頼業務)を半分以下に減らすことに第一に取り組むべきだと思う。自治体の首長や教育長が決断してこうした依頼業務を減らさないと、現在いろいろな業務をして忙しい先生たちはAIに積極的に取り組むことはできないのではないか」と問題提起した。


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