いよいよゴールデンウイークが近づいてきました。今年はカレンダー通りなら最大4連休と、そこまで大型連休というわけではありません。とはいえ、連休となると、やはりワクワクするものですね。近場の観光地へ足を運ぶのもいいですが、せっかくなら、いつもより遠い土地へ旅行に出掛けたいと思う方も多いのではないでしょうか。日常から離れた環境で、その土地の名物に舌鼓を打つ。そのうえで温泉があれば、私は最高です。
今回ご紹介するのは、秋田県の「十和田大湯温泉 岡部荘」。こちらのお宿は、きりたんぽ鍋や鹿角牛などの名物料理に、源泉掛け流しの温泉を楽しめる純和風の温泉旅館です。
開湯から800年の歴史を誇る十和田大湯温泉は、青森県との県境の秋田県鹿角市に湧く温泉地。アクセスは、東北自動車道の十和田インターチェンジ(IC)から車で約15分ほどです。大湯川のほとりに形成された温泉街は、旅館や共同浴場、飲食店などが十数軒立ち並び、コンパクトにまとまってます。

そんな温泉街の真ん中あたりに建つ「岡部荘」は、昭和30年創業の老舗旅館。創業者の別荘だった大正時代建築の建物を改装し、旅館としてオープンしたのがはじまりだそうです。約2000坪の広大な敷地の中にある建物は、純和風の設(しつら)えです。館内は、築年数百年を超えるレトロな重厚さは残しつつ、ところどころリノベーションすることで新しい設備を取り入れ、快適に過ごすことができます。宿泊した和室もリニューアルされていて、とてもきれいでした。敷地内には600坪ほどの日本庭園も整備され、お部屋やお風呂から望むことができます。


広々とした館内には「庭園付き露天風呂」「渓流露天風呂」「桜風呂(内湯)」「大正風呂(内湯)」「貸切専用露天風呂」と、五つのお風呂が点在しています。温泉好きな方なら、早めにチェックインして、館内の湯巡りをして楽しむ過ごし方もおすすめです。
「庭園付き露天風呂」は、岡部荘が誇る日本庭園を眺めながらの湯浴みが楽しめるお風呂です。春から夏にかけては豊かな緑、秋は紅葉、冬は雪景色を堪能しながら温泉に漬かることができます。
内湯の「大正風呂」は、別荘だった大正時代の風情を残すお風呂です。浴室自体はリニューアルされていますが、鮮やかなタイル張りの壁や、湯口に使用する松材など、当時のレトロな雰囲気を味わえます。




これだけお風呂があると、大量に温泉を使うことになりますが、なんと全ての湯船が加水・加温・循環・消毒無しの「源泉掛け流し」。数本ある源泉をブレンドして使用し、その湯遣いを実現しているのだそうです。
代表的な源泉の泉質は、ナトリウム-塩化物泉。無色透明のお湯は、ほんのり甘い硫黄の香りが漂い、舐(な)めてみると薄塩味に硫黄の風味が加わり、玉子スープのような味わいです。肌をやさしく包み込んでくれるような浴感が心地よく、手でさすってみるとツルツルスベスベとした肌触りでした。湯上りはそのツルスベ感がお肌に乗り移ったかのように、スベスベでサラサラなしっとり肌に。さらに体の芯まで温まり、いつまでもぽかぽかしていました。
夕食は、サーモン・ホタテ・エビのお造り、きりたんぽ鍋、鹿角牛・八幡平ポークのしゃぶしゃぶなどが食膳を彩り、ボリューム満点。熱々のニジマス塩焼き、揚げたての天ぷら、炊き立ての「あきたこまちのご飯」も後から登場して、胃袋を喜ばせてくれ、最後は稲庭うどんとデザートのフルーツで締めて、お食事終了。お腹がはちきれそうでしたが、どれも絶品でした。




「きりたんぽ鍋」「鹿角牛」「八幡平ポーク」「あきたこまち」「稲庭うどん」と、地元・秋田の食材や名物のオールスターといった感じの食事に大満足でした。

掛け流しの温泉に、地元の食材をふんだんに使った食事を堪能できる純和風の旅館は、日々の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれる「非日常」の世界でした。
春らしい気候が気持ちのいい季節です。連休はいつもより遠くの温泉へ、非日常を感じに出掛けてみてはいかがでしょうか。
【十和田大湯温泉 岡部荘】
住所 秋田県鹿角市十和田大湯字上の湯1-1
電話番号 0186-37-2245
【泉質】
ナトリウム-塩化物温泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)など/泉温49.0度など/pH:7.8など/湧出状況:自然湧出など/湧出量:9.0リットル/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆完全掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)