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東京五輪レスリング女子代表のクリナップ・皆川博恵さん

【はばたけラボ インタビュー】人生で何を大切にするか ――東京五輪レスリング女子代表のクリナップ・皆川博恵さん

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。

 2021年の東京五輪のレスリング女子76キロ級で5位となった皆川博恵(みながわ・ひろえ)さんに女性アスリートのセカンドのキャリアについて聞きました。

——東京五輪後は。

 大会後に、所属であるクリナップの正社員として広報・IR課に勤務するとともに、レスリング部副監督になった。( 23年6月からは日本レスリング協会の理事も務める。プライベートでは同年11月、元レスリング選手だった夫拓也さんとの間に長女を出産し、現在は1年間の予定で育児休暇を取得中 )

——毎日の様子は。

 とにかく子どもが中心。寝返りも始め、今までより目が離せなくなっている。授乳して寝かせて、急いで家事をするという感じ。生まれる前は『オムツ替え、大丈夫かな』とか心配していたけど、全然そんなレベルの話じゃなくて…。特に最初は大変だった(苦笑)。でも、子どもの目に見える成長は楽しみだし、今は幸せです。

——拓也さんの協力は。

 毎日のお風呂入れを担当してくれている。休日は、洗濯物を干したりたたんだり、料理もしてくれる。忙しくて(拓也さんに)イライラしちゃうこともあるけど、落ち着いて考えてみると、よくやってくれていると感謝している。

——東京五輪では3位決定戦で敗れた。

 終わった直後は『五輪は楽しかった』という満足感だったが、しばらくするとレスリングへの思いを断ち切れない気持ちが出てきた。それでも『第一優先は子ども(を産むこと)』と決めていたので、現役を続けるという選択肢はなかった。

——正社員での勤務を希望した背景には幼い頃からレスリングを教わってきた父鈴木秀知さんの教えがあった。

 年齢だけ重ねて社会経験がないことがコンプレックスになっていた。父にはいつも『レスリングしかできないような人間になるな』と言われていた。高校生の時くらいまでは『レスリングで活躍すればいいんでしょ』と思っていたけれど、大学、社会人とレベルが上がるにつれ、全員が夢をかなえられるわけではないことや、現役生活もそれほど長くないことが分かってきた。それで、いざ自分が何をしようかとなった時に、父の言葉が生きてきた。

——希望を受け入れてくれた会社への思いは。

 左膝をけがして2016年リオデジャネイロ五輪出場を逃したときや、思うような成績が出ない時も、私の意思を尊重してくれた。正社員登用や育児休暇のことも含め、節目、節目でサポートしてくれ、とても感謝している。

——念願の〝社会人デビュー〟は。

 苦労した。当初は、敬語の使い方一つとっても、これでいいのかなといちいちネットで調べたりして、メール一本送るのにもすごく時間がかかった。レスリング時代は自分が勝つためのことだけ考えていればよかったけれど、会社で働くというのは組織に入るということ、周りのことも考えないといけないなどいろんなことが、それまでにない経験だった。

——アスリートから母親となって感じることは。

 現役中は、ある意味で自分中心の生活をしてきた。でも、子どもが生まれて、子どものために生活をする中で「人として成長しているのでは」と感じながら日々を送っている。結婚、出産してもアスリートとして活躍できる女性が増えればよいと思う。

——スポーツ界でも女性活躍が目覚ましい。後輩たちへのアドバイスは。

 人生で何を大切にするかという優先順位を決めておくこと。特に、出産はできる時期が限られているので、パートナーがいるなら、第一に優先することは何なのかといった将来プランを話し合っておくべきだ。計画通りにいかないこともあるかもしれないが、よく考えておくことが大切だ。

——これからの目標は。

 会社で五輪に出たという経験を持っているのは私だけ。そういう私だからこそできるようなやり方で、会社のことを広く知ってもらったり、レスリングに関心を持ってもらったりできるような仕事をしたい。

東京五輪で戦う皆川さん(左)

 


#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとしたくらしを見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。


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