「生きることは食べること。食べることは生きること」——。私たちの体は、さまざまな種類の食べ物を摂取することで維持、管理されている。その際、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」が示している33種類のすべての栄養素を取れることが理想だろう。しかし、隠れ栄養失調やカロリーの取り過ぎなど、長寿大国日本の足元には、食生活の問題が横たわる。
そのような社会的課題に対し、ニュージーランド産などのキウイフルーツの輸入販売を手がけるゼスプリ インターナショナル ジャパン(東京、安斉一朗社長)が「ゼスプリ栄養改革プロジェクト」をこのほど始動。栄養価が高いキウイフルーツを2030年までに、60億食分を活用し、多様な栄養改革のアクションを起こしていくという。
▼「栄養バランスのとれた食事を」
同社の安斉社長は6月17日、都内のホテルで、「ゼスプリ栄養改革プロジェクト」の概要を公表した。このプロジェクトに、全国に約5万人の栄養士の会員を持つ、公益社団法人「日本栄養士会」(中村丁次・代表理事会長)と、青果物卸売業大手の「東京青果貿易」(川田光太・代表取締役社長)が後援することになった。後援の確認書類の調印式も実施。調印式の立会人として、来日中のニュージーランド・ラクソン首相が参加し、プロジェクトの成功を祈願するため、グリーンキウイをイメージした緑色のだるまの目入れを行った。
安斉社長は、「ゼスプリは健康的な食習慣を通して、人々の生活をより良くしていきたいと考えている」とした上で「日本は健康で長寿の国のイメージがあるが、生活スタイルの変化により、実は多くの課題を抱えている」と指摘した。
現代人の栄養状態については「日本の成人の3人に1人以上が栄養不良に陥っている」「朝食を抜いたり、低栄養な朝食を取っていたりする人は1200万人」「毎日、バランスの良い食事を取れていない人は4500万人」「1日の果物摂取量は政府の目標の半分以下」など、データを挙げながら解説。背景には、仕事などの忙しさから食事を抜いたり、野菜や果物不足による食事バランスの偏りがあったり、栄養に関する知識不足があるという。
その課題のソリューションとして安斉社長は、「ゼスプリは誰もが栄養バランスの取れた食事を正しく、楽しく手軽に取れる社会をつくるために、栄養改革プロジェクトを立ち上げた」と強調した。
具体的な取り組みは、「栄養の日」である8月4日からスタートさせる。安斉社長は「2030年までに、キウイフルーツ60億食分をさまざまなシーンで活用し、新鮮な果物などを摂食してもらうことで、栄養の改善につなげたい」と意気込みを語った。
▼「キウイ1個で相当補充できる」
ゼスプリ、日本栄養士会、東京青果貿易による調印式が行われた後、ラクソン首相が、ゼスプリ インターナショナル リミテッドのネイサン・フラワーデイ会長ともに登壇。ラクソン首相は、緑の大きなだるまに、墨の付いた筆で丁寧に目を書き入れた。
目入れ式の後、あいさつしたラクソン首相は「ニュージーランドは、ゼスプリのキウイフルーツをはじめ食品、飲料製品で高い品質で世界的に知られており、世界で需要のある健康的な製品を提供している」とした上で「ゼスプリが日本で(栄養改革プロジェクトなど)積極的な取り組みをしており、ニュージーランドと日本の関係強化に貢献していることを大変うれしく思う」と述べた。
式典終了後、取材に応じた日本栄養士会の中村代表理事会長は日本の食生活の現状について「世界中のありとあらゆる食べ物を日本人は食べており、多様化が進んでいる」と指摘した。「ただ、食べ過ぎて(カロリーオーバーなどで)肥満で困っている人がいる一方、安価な食べ物ばかりで、栄養素が不足している人もいる。その不足していると思われる方々に、たとえば、キウイ1個を食べていただくと、(栄養素が)相当補充できることから、私たちは、ゼスプリさんの今回のプロジェクトを後援することになった」と語った。
キウイの栄養成分は、他の果物と比べ、抜きん出ている。主要なフルーツの「栄養素充足率」で、ナンバーワンになっているからだ。栄養素充足率とは、果物を同じ量(100グラム)を食べた際、ビタミン、ミネラル、食物繊維など計17種類の栄養素が基準値に対してどれくらい含まれているかを数値化したもの。その数値が高いほど、いろいろな栄養素がバランスよく含まれていることを示す。
ゼスプリによると、主な果物のうち「サンゴールドキウイ」が15.9で、「グリーンキウイ」が12.5という結果だった。イチゴの9.2、バナナの8.2、カキの7.5、ミカン6.5などと比べ、高い数値となっており、日常生活で摂取したい栄養素が多く含まれていることが明らかになっている。
黄色のサンゴールドキウイに着目すると、1個を食べることで、1日に必要なビタミンCが取れる。このほか、緑色のグリーンキウイは1個で、不足しがちな食物繊維が補えることが分かっており、ニュージーランドのオークランド大学で、「便通を改善する効果が期待できる」とする研究結果が報告されている。