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サントリーのワイン生産拠点「登美の丘ワイナリー」=山梨県甲斐市

サントリー、最上級シリーズ「登美 甲州」発売へ 日本ワイン2024戦略、新・醸造棟も建設

 近年、日本ワインの品質が向上し、海外のワインコンクールでも受賞するようになるなど国内外で注目されるようになった。ただ、国内ワイン市場で日本ワインが占める割合は5%程度だといい、普及が進んでいるとは言い難い。

 「ものづくり」としてワイン生産に取り組むサントリー(東京)は5月14日、東京都内で「2024年日本ワイン戦略会見」を開き、日本ワインの価値向上を目指す戦略について説明した。

▽テロワールを重視

 サントリーは、同社で100年以上続くワイン事業を“祖業”と位置付ける。登壇した常務執行役員の吉雄敬子ワイン本部長は「100年ワインを造っているが、畑でなく工場で大量生産していると思われている」と、2022年9月にブランド戦略「SUNTORY FROM FARM」を立ち上げた理由を説明した。

吉雄敬子・常務執行役員ワイン本部長。「いい日本ワインを造っているのに知られていない現状がある」

 

 新戦略では、ブドウ畑の土壌や地形、気候といった自然の要素「テロワール」を重視。ワイン生産の拠点「登美の丘ワイナリー」(山梨県甲斐市)で「世界に肩を並べるジャパニーズワイン」に向け、ブドウ作りを進めてきたという。

 サントリーが、2024年の日本ワインとして発売するのがラインアップ最上級シリーズで「フラッグシップワイン」としている「登美(とみ)」の白・赤2本。「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」は、日本固有品種の白ワイン用ブドウ「甲州」を使用。これまでも最上級の次のシリーズ「登美の丘」ブランドで甲州ワインを出していたが、フラッグシップワインで初めてとなる発売について、吉雄さんは「自信を持って出せる甲州(ブドウ)ができた」と強調した。

登美の丘ワイナリーのブドウ畑。畑を取り巻く自然環境(気象条件、土壌、地形など)を重視して栽培している

 

▽「登美 甲州」用の畑を選定

 テロワールを追求するため、畑を約50区画に分けブドウ栽培をしている登美の丘ワイナリーで、「甲州」を育てる9区画のうち2区画を「登美 甲州」用のブドウを目指す区画に選定。大山弘平・登美の丘ワイナリー栽培技師長は「糖度が上がりにくい甲州で、安定した糖度を実現した」と説明した。大山さんは「登美 甲州」について「一定レベルの糖度があり、甲州らしい“やさしさ”の凝縮を併せ持ったワインだ」と自信を見せた。

「テロワールの追求こそ世界に通じるワインになる」と話す大山弘平・登美の丘ワイナリー栽培技師長

 

 同時期に発売する「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」は、フランス原産の赤ワイン用ブドウ「プティ・ヴェルド」を使用。「黒系果実の印象と、なめらかで気品のある味わい」が特徴だという。白・赤ともに24年9月10日に数量限定で発売。参考価格(税別)は「登美 甲州」が1万2千円。「登美 赤」は2万円。

「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」(左)と、同「登美 赤 2020」

 

▽新・醸造棟

 また、登美の丘ワイナリーに約7億円をかけて新・醸造棟を建設する計画も発表。24年9月に着工し、1年後には40台の小容量タンクでのワイン造りを始める予定だ。ブドウ畑の区画ごとに仕込み、小ロットで造ることで「ブドウの特徴に合わせた細かい原酒の造り分けができる」という。

2024年9月に着工する新・醸造棟(イメージ、ⓒ安井建築設計事務所)。小容量タンクを使用し、多彩なワイン造りを目指す

 吉雄さんは日本ワインについて「品質は世界レベルで、日本らしいオリジナリティーがあることが重要だ」と強調。サントリーが市場をけん引し、国内外で日本ワインの普及を進める決意を示した。

登美の丘ワイナリーの甲州ブドウ。完熟したブドウだけを厳選して収穫し、糖度を上げている

 


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